ゆっくりSS

本日、日本の国会である案が通された。 
それは、日本にのみいる、いや、〝有る〟一つの種を壊滅ないし全滅させる、というものだ。 
日本史上、いや人類史上稀に見るこの案が通った事で、一部の人間は戦々恐々としたが、 
日本人のほとんどは狂喜乱舞するという異常事態に陥った。

この事態に対し、海外からは反発が起こった。 
当然と言えば当然だろう。一つの種を全滅させるなど、ありえないことだ。 
日本に、シーなんちゃら、といった環境保護団体も多数乗り込んできた。 
いつものように嫌がらせをしようという目的でだ。 
そうすれば、気の弱い日本人は自分たちに気おされ、いずれこの事態は収束するだろうと踏んでいたのだ。

結果は、彼らは見通しが甘すぎた、と言わざるを得ない。 
日本人は最早我慢の限界にきており、その勢いたるや凄まじいものであった。 
彼らが予想していたよりもはるかに大きな日本人の抵抗、排斥が彼らを待ち受けていた。 
結局、命の危険を感じ、また日本人の真の恐ろしさを実感した彼らは、全員蒼ざめた顔で国へと帰った。 
彼らは語る。自分達に迫りくる日本人の顔は、現代に蘇ったサムライであったと。

そして、世界中がこの事態を静観することになった。 
世界のどの国も、いまだかつてこんなにも狂乱し、怒り狂った日本人を見たことがなかったのだ。 
日本人を、ここまで怒り狂わせるその種とは… 
そう。ゆっくりだ…

時間を少しさかのぼろう。 
初めはなんてことはなかった。 
つい数年前唐突に日本に現れ、初めこそは珍しがられ丁重に扱われたゆっくり。 
中身が餡子という常軌を逸したものではあったが、人語を介する、それなりの知能はある、ということで 
生物として、そして人間に次ぐ存在として認められてきた。

しかし、人語を介するだけで、それなりの知能があると判断してしまったのは誤りであった。 
少し甘やかすだけで異常なほど付け上がり、全人類を奴隷とみなす。 
人類だけならまだいい。世界ですら奴隷とみなし、この世のものはゆっくりの為にあると言って憚らない。

「ゆぅう!おやさいはかってにはえてくるんだよ!くそどれいはばかなのおおおお!?」 
「ちがうよまりさ!かってに、じゃなくて、れいむたちのためにはえてくるんだよ!」 
「ゆふー!そうだったねれいむ!まりさうっかりさんだったよ!」 
「むきゅ!なんにせよ、くそどれいたちからおやさいをとりもどすのよ!」 
「「「ゆおおおおー!」」」

野菜は地面が自分たちのために生やしてくるものであり、人間はそれを奪っていると言い畑を荒らす。 
そのたびに駆除する農家はまだいい。それでも懲りずに襲ってくるだけだが。 
だが、ゆっくりの人頭を模したその見た目から、駆除を憚られる農家は悲惨だった。 
調子に乗り続々と数を増やすゆっくりに畑は一瞬で壊滅させられた。 
ドスがいれば、スパークを以て理不尽なきょうってい!を結ばされることもある。

「ゆぅ~ん!いっぱいきのこさんがあるよおおお!」 
「ゆっがぁあ!うさぎはあっちにいけええ!ここはれいむたちのなわっばりだよ!」 
「んほおおお!いいきみだわ!」 
「まちぇまちぇ~!くしょいもむち~!ゆんっ!」 『ブチ』 
「ゆわ~おにぇえちゃんちゅよ~い!」 
「かりはだいせいこうだよ!でもちょっとおおいね。ぽーいするよ!」 
「これ、ちょっとかじってみたけど、げろまずね。すてましょう」

山の幸も、また地面が自分たちのために生やすと言い、採り尽くしてしまう。 
それも、採り尽くして多ければ、また、まずければ捨てるという大層贅沢な物だった。 
小さな虫などは、食べるためでなく、遊びのために殺すこともままある。野生動物ならばあり得ないことだ。 
山の小動物たちは餌がなくなったのと、ゆっくりに追い立てられ縄張りを追われた。 
そんな暴挙で山が持つわけがなく、ゆっくりはいずれ人里に下りてきて畑やらを荒らしまわった。

「くそじじい!あまあまをよこすんだねー!」 
(またか…無視無視。) 
「へんじしろおお!ちぇんさまのめいっれいだぞおお!」 
「ゆ?おきゃーしゃん!?あのおおきなはこにはにんげんがのっちぇるよ!」 
「ほんとうだねー!あれをぶっこわしてなかのにんげんをひきずりだすよー!」 
「ゆっゆおー!」

街でもご覧の有様。 
人間にしきりに話しかけては、対価も出さずに何かを要求する。 
挙句のはてには、車を破壊してまで要求しようとする有様だ。

「とまるんだね!ぷくーぎゅべ!」 『グシャ』 
「おきゃーしゃあああ!ゆぎゅぎゅ…ゆるしゃにゃいんだゆぶべゅ!」 『ブチッ』 
「うわ、またゆっくり轢いたよ…何回目だよこれで!」

当然、不可能だが。 
車はもちろん、人間の子供さえまともに傷つけることができない。 
子供に一つの群れで挑んだとしても、ドスがいない限りは何もできずに全滅させられるであろう脆弱さ。 
それなのに、どうしてここまで尊大になれるのかは誰にもわからない。

「ゆぅ~んまりさ!いいよぉ!いいよぉおお!」 
「ゆふうう!れいむのまむまむさいっこうなのぜええ!」 
「ママー。あれなにしてるの?」 
「見なくてもいいの!はやくいくわよ!」 
「でも楽しそうだよー?」 
「もぅ…いい加減にしてよぉ!」 
「くそにんげんがなにかいってるよ?」 
「きっとまりさたちがうらやましいんだぜえ…おいくそにんげん!すっきりー!どれいくらいにならしてやるのぜ?」 
「すっきりー!奴隷ってなぁに?」 
「ほら、もう行くわよ!」

道端で交尾をすることなど日常茶飯事。 
それが、小さな子供の情操教育に悪影響を与えるであろうことは容易に想像がつく。

「うわっ…ゆっくりに入られてる…」 
「れいむとまりさのおうちにかってにはいるなあああああ!」 
「ゆぁ~ん?いますぐでていくか、このばでじさつするならゆるしてやるんだぜえ?」 
「…出てけ。」 『ぽい』 
「「おそらをとんでるみたい!」」 
「ぐっちゃぐちゃじゃねえか…どうやったらここまで荒らせるんだよ!くっそがああ!」

家に侵入し、荒らすことなどままある。 
荒らすだけならまだしも、そこを自分の家だと言って憚らない。 
しかし潰すのはどうも憚られる。かといってこのゴミどもに対する法律もない。 
仕方なく逃がしたりするのだが、またやってくるのが当然であった。

こうしてここまでの暴挙に耐え忍んできた日本人だが、ついに爆発した。 
日本政府は当初から苦情を受けてきてはいたものの、

「ゆっくりと共存するのが民意であると確信している。 
 その証拠に、私たちは数えきれないほどの人からそのような意見を頂いている。 
 よって日本には、ゆっくりに関する問題は一切発生していない。」

とこの件に関して述べていた。 
しかし今回は、日本中で人々がゆっくりによる被害をこうむっているのである。怒りが噴出すのは当然だ。 
こうして日本中で怒りをまき散らす国民の姿を見て、ようやく動き出した。というより動かざるを得なかった。 
この事態に陥ってもなお静観するようであれば、暴動がおこり、政府は転覆させられんとする勢いだったからだ。

この事態を収めるために政府がだした結論は、野良ゆっくりを須らく全滅させるべし、ということだった。 
事実この事態に陥ってからようやく計算してみたところ、野良ゆっくりが存在することで得られる経済効果は、なし。 
日本のマスコットとしては見た目も中身も醜悪、就労することなどありえない。何においても役立たず。

逆に、野良ゆっくりがいなくなることで得られる経済効果は膨大であった。 
日本の農業をはじめとした産業が回復することをはじめ、 
ゆっくりを虐待、駆除するためのグッズを大々的に売り出せば飛ぶように売れることは目に見えていた。 
そしてゆっくりは異常に繁殖力が高い。しかし中身は甘味。管理、加工すれば食品としての販売も可能だ。 
さらに、飼いゆっくりに関しても国が管理することで、利益も上げられるとふんだ。 
そして何より、それらをすることにより支持率が上がるであろうことが見通されていた。

そこでまず、ゆっくりに関する定義等が整えられた。 
野良ゆっくりを一般人が抵抗なく虐待、駆除できるための印象操作から 
野良と飼いを明確に区別することまで様々な意味合いを持っていた。

  • ゆっくりは饅頭であるが故、生物ではない。
  • ゆっくりには刑罰は存在しない。被害にあった人、もしくはゆっくりに遭遇した人の裁量で判断すること。
  • 野良ゆっくりは環境、経済などに被害を及ぼす第一級危険〝無〟生物であるが故、潰すのが望ましい。
  • 飼いゆっくりは、政府による厳正な審査の後、バッヂを発行されたもののみ、ショップで販売することを許可する。
  • 飼いゆっくりと野良ゆっくりは、有する知性、道徳感、様々な点から勘案し、最早別種である。
  • バッヂによる政府認可を受けていないゆっくりを販売しているのを発見した場合、厳罰に処す。
  • 飼いゆっくりには、購入した際に付属しているICチップを搭載したバッヂを付けるのを義務とする。
  • バッヂ付きの飼いゆっくりに危害を加えた場合、科料を科する。

この考えを日本中に広く浸透させるべく、更に対策は進んだ。 
とある小学校を見てみよう

「はーい、みなさん。今日はゆっくりについてのビデオを見ましょう!」 
「「「はーい!」」」

今、日本中でゆっくりに関するDVDが政府から配布された。その内容を見てみると…

「ゆっくりについてですがー、実は、生き物ではなく、ただの饅頭でーす!」 
「ゆっがぁあああ!はなぜええええ!」 
「ここにお饅頭がありますねぇ。そして、ここにゆっくりがありまーす。この二つを割ってみると…」 
「ゆがぁ!」 『パカッ』 
「見てください!二つとも全く同じ、餡子なのがわかりますね。種類によって中身は違いますが、 
 ゆっくりは全て饅頭であり、生きていないのでーす!」

まず、ゆっくりについて政府で定められた定義について述べている。 
生徒たちは、ゆっくりが生きていないと知り、驚いた様子だ。 
つぎに述べられているのは、ゆっくりが今までしてきたこと。

「次に、これを見てください。これは、農家の人たちが一生懸命育てた野菜です。一杯生えてますね。 
 これが、わずか1日後…見てください。ひどい有様です。これはしたのは…ゆっくりです。」

まず、瑞々しい野菜が畑一杯に実っている映像が映り、次にその畑が壊滅している様子が映された。 
豊かな畑の映像を見た後だけに、荒らされた映像が生徒達に与えた衝撃もひとしおだ。 
ちなみに、これは全て実際の映像であり、壊滅にかかった時間なども含め嘘偽りのない内容だ。

「私はゆっくりに、このことについてれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりーにインタビューしてみましたー! 
 はてさて、一体何と答えたでしょうか!?」

と、ここでいったん映像が一時停止された。教師が生徒たちに向かって語りかける。

「で、みなさん。今からインタビューが始まるわけですが、ゆっくりは何と答えたと思いますか?」

次々に生徒たちから手が上がる。

「はい、野村君。」 
「はい。悪いことをしたと、謝ってると思います。」 
「なるほど、悪いことをしたらそれは当然ですね。次は…二階堂さん。」 
「はい。ばれたので、インタビューには答えずに逃げ出したと思います。」 
「ふむ、たしかに怒られるのは嫌ですもんね。逃げるのも無理はないかもしれません。え…と、三山君。」 
「はい、反省して謝って、今は畑作りを手伝ってると思います。」 
「改心して、いいことをするようになったんですね。では、答えを見てみましょう。」

再生ボタンが押された。

「ここにあった野菜は全部君達が食べたんだよねー?それについてどう思う?」 
「なにいってるんだぜ!ぜんっぜんたりないんだぜえええ!はやくもってくるんだぜええええ!」 
「野菜は、人間が時間をかけて、一生懸命作ったものなんだよー。そう簡単には持ってこれないの。」

ゆっくり達は顔を見合わせ、しばらくインタビュアーの方を眺めていたが…

「ぷっ」

1つのれいむが吹き出したのをきっかけに

「ゆっひゃひゃひゃひゃひゃ!」 
「むきゅーきゅっきゅっきゅ!」 
「ゆひひひ!な、なにいっでるのおお!?」 
「くそにんげんはほんとうにおばかねええ!りかいできないわああ!」

一斉に笑い出した。

「えぇと、どういうことかな?教えてほしいんだけど。」 
「ひぃ、ひぃい…はらわたが…よじれるんだぜえ…」 
「れ、れいむもわらいすぎて…しゃべれないよ…ぱちゅりー、おねがいするよ…」 
「むきゃきゃぁ…むきゅう…しかたないわね。いっかいしかいわないから、よくきくのよ?」

ぱちゅりーが、心底あきれ返った、という顔で語りだした。

「このよはね…ゆっくりのためにあるの。それはいくらむのうなにんげんでもしってるとおもうわ。 
 なぜかって?ゆっくりしてるゆっくりをもっとゆっくりさせるためなのよ。あたりまえよ。 
 あのおやさいたちはね、ぱちぇたちをゆっくりさせるためにじめんがはやしたのよ。」 
「ゆ~ゆゆ~ん。」 
「ゆ~っくり~。」

ぱちゅりーの言い分を、他のゆっくりはまるで子守歌でも聞いているかのように、 
心地よさそうに揺れながら、幸せそうに聞いている。

「あのお野菜を、種だった頃から人間が育ててたのは知らないのかな?」 
「だまりなさい!いまはもうおやさいをださなくなったやくたたずのじめんとはいえ、いちどは 
 ぱちぇたちをゆっくりさせようとした。そこはひょうかするわ。 
 でも、くそにんげんたちは、じめんがだしたおやさいをひとりじめしてるだけじゃないの! 
 ぱちぇたちをみならってゆっくりするどりょくもせずに、ほんもののげすね!」 
「そうだそうだ!」 
「ぱちぇがいってることはおちびでもしってることなのぜぇ?」 
「まったく、これだからくそにんげんは…おやさいをとりかえしただけですんだことにかんしゃしなさい!」 
「むっきゃ!そのとおりよ!せいっさいされないだけありがたいとおもいなさい!」

インタビュアーはそこまで聞き届けると、カメラに向き直り語りだす。 
よくよく見てみると、マイクを持つ手が震えている。

「はーい、以上がゆっくりへのインタビューでした。皆さん、正解できましたかー?」

そこで、また一時停止される。

「はいはいみなさん。どうでしたか?ゆっくりはああ答えましたよ。」

そう言い、教師は生徒たちを見る。 
生徒たちはというと…自分たちの想像したはるか斜め下の回答に、誰もが呆然としていた。 
そして、一人の生徒が手をあげた。

「はい、三山君。」 
「あ、あの…先生。あれは特別悪いゆっくり…なんですよね?」

その質問に教師は顎に手を当て、少し考え込んだ後、きっぱりと言い放った。

「あれは良いゆっくりに入る部類です。」

質問をした生徒…三山君をはじめ、生徒たちは、もう人形のように教師を見つめている。

「で、でも先生。家で飼ってるれいむは…」 
「良い質問ですね。」

三山君は、家でれいむを飼っている。 
そのれいむは、態度から何から映像のゆっくりとは似ても似つかないものである。 
三山君の言葉を遮るように、教師は語り続ける。

「後で説明するので今は詳しく言いませんが、飼いと野良は別の種類、と考えた方がよいでしょう。」 
「で、でも、」 
「では、さっきのゆっくり達と三山君が飼っているゆっくりは同じ種類だと思えますか?」 
「……」

そこまで言うと、三山君は黙ってしまう。

「続けます。あのゆっくり達が良い部類に入る、と言ったのはなぜだかわかる人?」

生徒たちは手をあげない。インタビューの時点で生徒達の想像の範囲外へ行ってしまっていたからだ。

「わかりました。では、説明します。あのゆっくり達は、こちらの話を聞き、そしてこちらの質問に答えました。」 
「…それって、普通じゃないですか。」

一人の生徒がポツリとつぶやく。

「普通なのは人間なら、です。」

またも教師は言い放つ。

「他のゆっくり…悪いとは言わずとも…そう〝普通〟のゆっくりでも、ああいうシチュエーションならば襲ってきてもおかしくありません。 
 こちらの話は聞きません。聞く必要もなく、自分と違う意見を言うものは制裁しようとします。」

生徒たちは騒然とする。

「先生。じゃ、じゃあ…悪いゆっくりなら…どうするの?」

別の生徒が恐る恐る聞く。 
教師は息を吸い込み、しばらくためを作ってから言った。

「殺そうと、してきます。」

質問をした生徒は予想外の答えに、ぴしり、と固まってしまった。 
生徒たちが次々と質問を投げかけてくる。

「で、でも殺そうとしてるとこなんて見たことないです!」 
「そうだよ!そんなので殺すとか、おかしい!」 
「ありえないじゃん!先生どうしちゃったの!?」

生徒たちの質問を、教師はただうなずきながら聞いている。

「なんか答えてよ、先生!」

一人の生徒がそういったのをきっかけに、教室は静まり返った。 
教師は、静かに語りだす。

「…この中で、ゆっくりに体当たりされたり、枝などでつつかれたりしたことがある人、手をあげなさい。」

答えになってない。何人かの生徒はそう言おうとした。が、教師の迫力に押され、黙ってしまう。 
そして、クラスの大半が手を挙げた。

「でも、あんなの全然効かねーよ!な!?」 
「うん!痛いとか感じたことないし!」 
「枝でつつかれた時、くすぐったかったよな!」

クラスのいたずらっ子たちが囃し立て、周りの生徒たちがそれに賛同する。

「…では、あなたたちにしたようなことを、ゆっくりにしているのを見たことがありますか?」

生徒たちは再び静まり返る。そして教師は、なおも静かに語る。

「…ほとんどの人がありますよね。今や日本中でよくみられるものですから。 
 その中で沢山のゆっくりに体当たりされたり、体中枝だらけにされ、潰れてしまっているゆっくりを見たことがある人、手をあげなさい。」

今度は、先ほど手をあげたよりもさらに多くの生徒が手をあげた。 
それほど、日本では日常的な風景になっているのだ。

「あれは、私達で言えば、〝死んでいる〟のです。野良ゆっくりにとって、命の概念はそんなものです。 
 気に入らないから殺す。食べ物が欲しいから殺す。弱い者いじめが好きだから殺す。それが、ゆっくりです。」

そして、一呼吸おいて、教師は言う。

「そして、ゆっくりはそんなことを、君達にしようとしていたのです。 
 本気で、君たちを殺そうとして、体当たりしたり、枝でつついたりしてきたのです。」

生徒たちは騒然とした。 
殺す殺されるなどは、平和な日本においてはどこか夢心地な言葉。殺意を向けてくる相手など存在しない…と思っていた。 
それが、今まで自分たちは日常的に殺意に晒されていたのだと、理解してしまった。 
あまりにも力の差がありすぎるが故に、気づかなかっただけなのだ。

「想像してください。もし、ゆっくりがあんなのではなく、私達よりずっと強い存在だったら… 
 私たちが、どうなっていたのかを。」 
「や、やだぁっ!先生!怖いよぉ!もうやめてええ!」

ついに一人の女生徒が我慢できずに、耳をふさぎ、目を閉じてしまう。

「…すいません。すこし言い過ぎたようですね。でも、みんなこれだけは理解してください。 
 あなた達は私の大切な生徒です。そして、だからこそ、この事実を知らせたかったのです。 
 野良ゆっくりが、あなたたちに、どんな恐ろしい感情で接してきているか、知っておいてほしかったのです。」

教師はそこまで言うと、再び明るい調子で話し出す。

「と、まぁ怖い話はここまでにしましょうね!ところで、西田君!」 
「な、なに!?」

西田君…先ほど、ゆっくりに攻撃されてもいたくないと言っていた、いたずらっ子だ。

「君は、正解!」 
「…へ?」

教師の突拍子もない言い分に、思わず固まる。

「えー私がしたのは、あくまで仮定の話です。実際は、西田君が言うように、ゆっくりが私達に攻撃できることなど、 
 たかが知れているのです。」 
「さっきから言ってるじゃん!」 
「なんで怖く言ったんだよ先生!」 
「あっははは!出来心です。ごめんね。では、最後にゆっくりについての対処を見ていきましょう。」

そう言いながら、教師は再生ボタンを押した。

「はーい、みなさーん!さっきの問題、正解できたかなー?次はゆっくりについての処理を教えまーす!」 
「ゆっがぁああ!ここからだせええ!」 
「ざこがいきがってるんじゃないのぜ!」 
「とかいはじゃないわね!こうなればいよいよせいさいもじさないわ!」 
「むきゅ!ぱちぇたちにかかればいちころよ!」 
「「「「せいっさいするよ!」」」」

場所は変わり、4畳半ほどの狭い室内だった。 
先程のインタビュアーと、インタビューを受けた野良ゆっくりたちがそこにいた。 
ゆっくり達はインタビュアーに体当たりをくりかえしている。

「まずは、このゆっくり達をー…ぼっこぼこにしまーす!」

そこからは、一方的な暴力が始まった。 
やはりインタビューで溜まっていたのだろう。女性とは思えない動きを見せ、 
流れるような、かつ力強い動きでゆっくり達を殴り、蹴り、千切り、突き、叩き、打ち… 
徒手空拳で出来るほとんどの暴力が、そこにあった。 
ゆっくり達は暴力を受けるたびボムボムと吹き飛ばされ、壁に当たって跳ね返ってきては次の暴力に晒されていた。 
インタビュアーは、眼で見ずとも的確に4つのゆっくりの居場所を把握し、 
狭い室内で4つ同時に、ゆっくりでスカッシュを行うという離れ業を見せている。 
そして1分後…

「はーい、できあがりー!みんなもゆっくりをみかけたら、こういう風にしてあげてねー!」

ぼろぼろになり、息も絶え絶えな4つの饅頭がそこにあった。

「今から潰すわけだけどー、ちょーっと、ゆっくりに聞いてみよっか!反省してるかどうか!みんなも答えを考えてね!」

と、またここで一時停止。

「では、ゆっくりがどう答えるか分かる人?」 
「はい。」 
「ん、山野君。」 
「謝る…と思います。」 
「まぁ、正解かな!よし。続きを見ましょう。」

そして、また再生。

「反省した?何かいうことはあるかなー?」 
「ごべん…なざい…」 
「ゆる…じで…」 
「もう…じないわぁ…」 
「ぱちぇたちが…わるがっだわ…」

この回答に、生徒たちからどよめきが上がる。 
謝ってるから許してあげて、という声も上がる。

「みんな、静かにね。」

教師にたしなめられ、静かに映像を見る生徒たち。

「許してあげよっか?」 
「ほ、ほんとう!?」 
「うん、何が悪かったか答えられたらねっ!」 
「「「「ゆ゛!?」」」」

その問いに、4つは固まる。

「どうしたの?答えたら許してあげるんだけどなー。」

しばし沈黙した後…

「はぁあああ!?なにいっでるのお!?なにもわるいことしてないでしょおおおお!」 
「あやまったらゆるすのがじょうっしきよねええええ!」 
「まりさたちがあやまったじてんでかいっほうしないといけないんだぜえええ!」 
「どれだけあたまがわるいのおおおお!?おんこうなぱちぇももうがまんできないわああ!」

先程散々痛めつけられたのも忘れ、がなり立てる。

「みんな、分かったかなー?ゆっくりが謝るのは、鳴き声とおんなじだよ! 
 結局は何が悪いかなんか、絶対!分かるわけがないからぁー…」

インタビュアーが軽快に飛び跳ねる。

「こんな!」 
「ゆびゅべっ!」 『ぐしゃ!』 
「風に!」 
「ぎょべぇえ!」 『ブチッ!』 
「潰して!」 
「んほぉ!」 『ブチュル!』 
「あげてねっ!」 
「むぎゅっ!」 『ドボフッ!』

そのまま軽快なステップで、1つずつゆっくりを踏み潰してゆく。

「はい、おしまーい!ちゃんと野良ゆっくりを見たら、こうして潰すようにしようね! 
 …え?本当に鳴き声なのかって?本当だよ!だって…あのゆっくり達、前にも畑荒らしで捕まってるからねっ! 
 と、ここで最後の問題!前、捕まった後、どうしたでしょーか!みんなならもう分かるよねっ!」

また、一時停止。 
もう教師が催促せずとも、多くの手が上がるようになっていた。

「はい、佐野君。」 
「捕まって…それで謝って逃がしてもらって…それで…」 
「ふむふむ。」 
「また畑を荒らしに来た?」 
「佐野君と同じ答えだと思う人、手をあげてみてください。」

生徒は全員、手をあげた。教師は息を吸い込み…大きな声で答えた。

「大っ正っ解!よし、もうすぐ終わりです。続きを見ていきましょう。」

また、再生。

「そう、実はそのあと必死で謝って、命乞いして、逃がしてもらってるんだよね。でもね、でも… 
 そのあと、なんともっとたっくさんの仲間を連れて畑を荒らしに来ましたー! 
 それが、さっきみんなに見てもらったぼろぼろにされた畑なんだよね… 
 だから、ぜーったいにゆっくりは許しちゃダメ!そもそも悪いって思ってないからね!」

インタビュアーは一切嘘は言っていない。農村の住民から聞いた、本当の話だ。 
その裏付けとして、農村の住民からの悲痛な叫びもきちんと別に収録してある。

「で最後に、後に残ったごみなんだけど…」

インタビュアーはゴソゴソとゴミ袋を取り出してきた。

「ゆっくりは生ごみだから、ちゃんと燃えるごみに捨てようねー!みんな、わかったかな!?」

満面の笑みでインタビュアーが言う。そこで、DVDは終わっていた。

「はい、みなさん。どうでしたか?これが、野良ゆっくりです。さっきの農村のような話は、日本中で起こっています。」

ざわざわと生徒たちが騒ぎだす。 
反応はさまざまではあるが、どの生徒から上がる声も、 
野良ゆっくりはひどい、ありえない、潰さないと、といったものであった。 
先程教師が話した、ゆっくりが自分たちに殺意を向けてきているというのも、 
生徒たちがそのような反応をするのを大いに助長しているであろう。

「では続いて、飼いゆっくりに関してのDVDを見ていきましょう。」 
「「「はーい。」」」 
「あ、そうそう。感想文を宿題で書いてもらうので、しっかり感想考えておいてくださいね。」 
「「「えぇー!」」」

こういった教育が、日本中で行われた。 
時と場所により、DVDの内容は変わってはいるが、言っていることはどれも同じだ。 
こうして、日本中に〝野良ゆっくりは忌むべき存在〟であるとの共通認識を浸透させていった。


やがて、日本中に先のような共通認識が広まっていった。 
人々は遠慮なくゆっくりを潰すようになった。何かしても、何もしなくても。 
日本政府のお墨付きだ。野良であれば、どんな扱いをしたところで誰も咎めないどころか、 
潰すのが望ましい、とまで言われているのだ。 
ここで、被害に遭い、DVDにも起用されたあの農村を見てみることにする。

「ゆゆ~きょうもおやさいをくそにんげんからとりもどすのぜ~♪」 
「むっきゅ!くそにんげんはいつになればぱちぇたちをうやまうようになるのかしら!」 
「いつまでたってもむりにきまってるよ!だってくそにんげんだよ!ゆぷぷぷぷ!」

今日も今日とて、畑に侵入しようとする、森からやってきた野良ゆっくり達。数は30以上か。 
そこに待つのは、農具を構えた村人達。

「きやがったな。のこのこと薄汚い饅頭風情が…!」 
「落ち着け、少しくらいは残してあのドでか饅頭を釣る餌になってもらわんと。」 
「わかっとるわ!」 
「だから落ち着け。あいつらは完全につけあがっとるから、この次、壊滅できるて。」

そして村人達はすべてのゆっくりを畑の中におびき寄せた後、完全に取り囲んだ。

「よくもまぁのこのこときやがったな、ゴミどもが。」 
「ゆ?ゆ?ゆ?」 
「わしゃもう我慢ならんて!早く潰させてくれ!」 
「まぁ待て。少し話したいことが…」 
「ゆっぎい!くそにんげん!おやさいをどこにやったあああああ!」 
「またぱちぇたちからうばったのね!いっつもそうだわ!ほんとうにげすね!」 
「……もう、いいかねぇ。」 
「少し、話でもしてやろうかと思ったが、わしも限界じゃ。」 
「俺も。」 
「わしも。」 
「なにをさっきからいって『ボッ!』むぎぃい!」 
「「「ぱ、ぱちゅりー!」」」 
「それ、潰せ潰せ!全部は潰すなよ!ドでか饅頭を釣る餌になってもらわんとな!」 
「ゆっひいいいい!なんでこんなざこたちにかてないのおおお!?」 
「いぢゃい!いぢゃい!やめでええ!」 
「ゆがぁあああ!いっだいれいむだぢがなにをじだっでいうんだあああ!いっでみろおおおお!」 
「何をしただと…何をしただと…!何をしただと!もう一回言ってみろ!この腐れ饅頭!」 
「ゆんやああああ!ごべんなざいいいい!」 
「もっとじゃ!足りん!全然足りん!ひと思いに潰すな!徹底的に痛めつけろ!」 
「全部は潰すなよ!残す奴も絶対に無傷で返すな!謝っても無視だ!今まで俺たちは何回これを聞いてきた!」 
「「「おおおおおお!」」」

どれもこれも、徹底的に痛めつけられた後、時間をかけて潰されていった。 
そうして長い時間がたった。やがて、残ったゆっくりは3つのみ。 
3つとも、かろうじて移動できる程度の体力しか残されていない。

「ゆ…ゆひぃ…」 
「だじゅげでぇ…」 
「わからないよー…」 
「おら!早く行けっ!てめえらどころか、ドスだってゴミみたいなもんなんだよ!」 
「ゆ…ゆひひ…おぼえてるのぜ…つぎはどすに…せいっさいを…」 
「早く行けっつってんだろ!」 『ボシュ!』 
「おい!なにやってんだ!」 
「す、すまん…つい…」

悪態をつくまりさをサッサと追い返そうと、蹴りを入れる村人。 
サッカーボールのように蹴り飛ばそうとしたのだが、勢いが強すぎてつい上半分をえぐり取ってしまった。 
まりさはもう、ただの饅頭に戻ってしまっている。これではいよいよ役立たずだ。

「…早く行け!」 
「ゆ、ゆひいいい…」 
「わからないよー…」

残った2つは脱兎のごとく…と言っても人間の忍び歩きより遅い速度だが…で逃げ出した。 
そして、満を持して次の日がやってきた。 
ゆっくりは基本的に昼行性、かつ目覚めは遅い。昨日追い返したのが夕方で、そこからドス対策をする時間は十分あった。

「ゆぅっがぁああ!どすがきたよくそにんげんん!みなごろしにしてやるううう!」 
「ゆぷぷぷぷ!くそにんげんももうおわりだね!」 
「どす!えんりょはいらないよー!みなごろしにしてねー!」

ドスまりさが憤怒の表情で村にやってきた。ドスに連れられてきたゆっくりは300程か。 
村人は準備万端だ。いくらドスと言えど所詮はゆっくり。偵察がドスを発見し、それを知らせてから到着するまで 
実に1時間以上かかっていた。

「き、来やがった…!」 
「怖がってんのか!?ここで負けたら何もかも終わりだぞ!」

村人たちはなぜ今まで畑荒らしの被害にあっていたか、それはゆっくりの見た目もあるが、 
ドススパークの威力を見せられ、それにより今までうかつに手が出せなかったのが大きい。 
しかし今は違う。ゆっくりは生き物ではなく饅頭だと、国からお墨付きをもらっている。 
さらに国は、ドスのような危険なゆっくりの研究はもう完了させており、全国に対策マニュアルを配布していた。

「マニュアル通りやれば、問題ねえさ…」 
「お、おお!」

それでも、やはり怖いものは怖い。しかし村人は手を取り立ち上がり、ドスへと立ち向かった。 
マニュアルもある、何より全員で力を合わせればきっと勝てる!そう思っていた。 
しかし、村人のその認識は間違っていたと言わざるを得ない。

「う、うおおおお!」 
「ま、待てっ!危ねえぞ!」

血気盛んな若者がドスに向かって駆け出す。 
ドスはそれを悠々と迎え撃つ。 
そして、若者の鍬が、ドスに振り下ろされた…

「いっぢゃあああああああああいいいいいい!!」

ドスまりさは、激痛に悶え、ゴロゴロと転がっている。

「…へ?」

予想外の事態に、あっけにとられる若者。その間に、ドスは体勢を立て直してしまった。

「ゆぐぐ…てかげんしてやればちょうしにのって…すぱーくをうつよ!」 
「おい!危ねえぞ!逃げろ!」 
「ゆふふふ!もうおそいよ!どすのすぱーくからはにげられないよ!」

スパークを撃つ準備を始めるドス。 
若者の方に向き直り、地面に体を固定する。そして、口内に生えているスパークきのこをもごもごと探す… 
咀嚼し、飲み込み、長いチャージを経てようやく発射する…予定だったが、そんなのを待つ馬鹿はゆっくりだけだ。

「…」 『ドスッ!』 
「ゆぎいいいいいいいいい!」

再び鍬を振り下ろす若者。そして再び悶えるドス。若者…いや、農民達はようやく理解した。

「みんな!こいつ有り得んくらい弱いぞ!やっちまえ!」 
「「「おおおおおおお!」」」

村人は一斉にドスに群がった。 
ドスは若者を悠々と迎え撃ったかのように見えたが、実は若者の全力疾走に反応できていなかっただけだった。

「こいつ!見かけ倒しか!」 
「今までさんざでかい態度とりやがって!」 
「徹底的に痛めつけるんじゃ!百回潰してもまだ足りん!」 
「ゆっひいいいいいい!ごべんなざいいいいいいいい!」 
「なにがごめんなさいだ!鳴き声だって知ってるんだぞ!」 
「はははは!こりゃあいい!遊び道具程度にはなるな!」 
「もうゆるじでええええええ!」 
「ど…どす?」 
「てかげんしなくて…いいのよぉ?」 
「むきゃ…はやくすぱーくを…」

ゆっくりの中では伝説とまで謳われるドス。 
今、そのドスが何もできずに村人によって解体されてゆく。 
その様子を野良ゆっくりたちはただ茫然と眺めていた。 
そう。村人の認識は間違っていた。確かにマニュアルはあった方がいいかもしれない。 
しかし、ドスを倒すのに人間が力を合わせる必要などなかったのだ。

「ゆ…ゆわぁああああああああ!」 
「や、やくたたずなんだねー!あれは!」 
「つかえないどすはおいていくんだぜ!」 
「むきゅう!これからはぱちぇがちゃんとおさをつとめるから…さよならどす!」

野良ゆっくりたちはドスを置いてさっさと逃げ出した。いや逃げ出そうとした。 
しかし、そう甘くはないものだ

「あんたたち…逃がすと思ってんの?」 
「さんざんやってくれたんだしねえ…」 
「今日は、一匹も残さなくていいらしいじゃない。」 
「はんっ!こんな汚いの、おやつにもなりゃしない!」

逃げようとする野良ゆっくりの前に立ちはだかったのは、村の女性たち。 
男性陣からドスをやった後手伝ってくれ、と言われていたのだ。 
まだドスは潰れていないのだが、着々と解体されていっているのでそれと同義である。

「さぁーて…覚悟しなさいよ、あんた達!」 
「「「ゆ…ゆんやぁあああああああ!」」」

かくして、この村を襲撃した野良ゆっくりはあっという間に全滅した。 
その後、村人総出で森を狩り出し、残っていた他の野良も全滅した。 
その結果、この村で野良ゆっくりの被害は消滅した。 
この様子は動画投稿サイトにアップされ、今まで人々が持っていたドスのイメージを覆した。

次は、街の様子を見ていこう。

「おちびちゃん!あのくそじじいからあまあまをうばいかえすよー!わかったねー!」 
「ゆっくりりきゃいしちゃよ!」

またしても何かを要求する野良ゆっくり。

「じじい!とまる『ブチュ』びゅべええええ!」 
「おきゃーしゃああ!たしゅけ『グチュ』 
「~♪」

目の前に立ちはだかった野良ゆっくりを、わざわざ踏みつぶしてゆく。 
今まで無視しかできなかったモノに断罪できるのは気持ちがいいのだろう。晴れ晴れとした顔だ。

「ゆぅうう~まりさまりさあああ!ぺにぺにさいっこうだよおおお!」 
「れいむもまむまむしまるんだぜえええええ!」 
「あ、ママ!ゆっくりだよ!」 
「ほんとねぇ。けんちゃん、ゆっくり見たらどうするんだっけ?」 
「はーい!」

道端で情事に耽る2つに駆け寄る子供。 
そこに通りがかったのは、母親と小さな子供。

「ゆぁあ~ん?なんなのぜこのくそちびはぁ?」 
「まりさのぺにぺにがほしいならひざまずいてれいむのあんよをなめて『ガッ』ゆひぃいい!?」 
「よっと、それー!」 『ベキョベキョベキョ!』 
「れ、れいむうううううううう!」 
「次はお前だー!」 『ゴリュゴリュ!』 
「ゆびぼぼえべっべえ!」

れいむは子供によって口を限界以上まで開かれ、最終的に裏返ってしまった。 
まりさは、口の中に手を突っ込まれ、中枢餡を乱雑にかき混ぜられた。

「よく出来ました!次はー?」 
「うん!ママ、ゴミ袋ちょーだい!」 
「そうそう!いい子ねぇ!ゴミはちゃんと捨てないとね!」

こんな小さな子供ですら、ゆっくりをばらばらにするのはたやすい。それほど脆弱なのだ。 
そしてそのあとは何をするかきちんと理解している。教育の賜物だろう。

「ゆんっ!」 『ぽむっ!』 
「ゆっふう!」 『ぽむっ!』

ここは、以前ゆっくりにおうち宣言された家。 
いつもは窓ガラスを石などでぶち破って侵入するのだが、今日はなぜか窓があいていた。

「「ここを、れいむとまりさのゆっくぎびゅべいぶううううう!?」」

おうち宣言途中に、何者かによって遮られる。

「懲りずに来やがったな…」 
「じじい!れいむたちのおうちからでていけえええええええ!」 
「なんかいいえばわかるのぜ!きょうはもうげんっかいなのぜ!ころしてやるのぜえええ!」

遮ったのは、家の主。窓もわざと開けていたのだ。 
そして予想に全く違わず、そこから2つは飛び込んできた。

「おらおらおらおら!」 
「ゆ、ぎゅび!ぎゅごべ!」 
「げびゃ!ごげべええええええ!」

2つを執拗に踏みつける。10秒後…

「ごべんなざああああああああい!」 
「あやばるがらゆるじでえええええ!」 
「…お前ら、なんでこんなことされてるか、分かるか?」 
「「ゆぅう!?」」 
「分かるかって聞いてんだよ。」 
「…なにもじでないのにわがるもぐぞもないだろおおおおお!?」 
「あやまっだんだがらゆるぜええええ!まりざもうおごっだんだぜえええええ!」 
「はっはははは!ビデオで見たとおりだ!お前ら!これから俺が、お前らを 
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!! 
 殺してって言うほどまで痛めつけてやる!さぁ、俺ん家でゆっくりしてけ! 
 死ぬより辛い目にあわせまくってやるよ!」 
「「ゆ、ゆひいいいいいいいい!」」

家の主は2つを持ち、壁やテーブルの角に何度も叩きつけながら家の奥へと消えていった。

また、別の場所。 
一人の青年が携帯電話をいじっている。と、何かを見つけたようだ。

【ゆっくりの群れ発見なう。場所は、○○街の○○森。拷問して吐かせたところ、この森、群れがたくさんあるみたい。】 
「まじか!すぐ近くじゃん!早くいかねーと先こされちまう!」

ツイートを見た青年は、急いでバイクで現地に駆け付ける。 
そして、その後もツイートを見て続々と人が集まってくる。

「あ、書き込みを見て…?」 
「そうなんですよー!あなたもですか?」 
「ははは、書き込んだのは私なんですよ!こんなに早く来るなんて!」 
「あ!もう人がいる!早ーい!」 
「なんでにんげんがごんなにいっばいぐるのおおおおお!?」 
「もうやべでよぉおおお!」 
「ゆぎいいい!ここはれいむたちのなわばりだよ!はやくでていけええ!ぷっくぅうううう!」 
「それじゃあみんなで、どれだけゆっくりを狩れるか競争しますか!」 
「いいですね!時間はゆっくりがいなくなるまでってことで!」 
「いちばんお飾りを持ってた人が優勝で!」 
「「「ゆんやああああああああああああ!」」」

集まった人は、互いに親睦を深めあいながら、森に生息している野良ゆっくりを殲滅していった。 
そして、その森からゆっくりは激減した。

こうして、人々は嬉々として日本中からゆっくりを殲滅していった。


一方国はその間何をしていたかというと、各都道府県に最低一つ、国営の〝加工所〟なるものを建設していた。 
これは、表向きはゆっくりを食品加工する工場のようなものだったが、 
その内実は、ゆっくりに関する様々な、先進的研究が急ピッチで進められていた。 
その結果の一部が、先のDVDや、ドス対策マニュアルである。 
またこれにより、ゆっくりに関する法律に

  • 飼いゆっくりの飼育を放棄する場合は、加工所に連絡し、引き取らせること。
  • 飼いゆっくりを不法に投棄した場合、罰金を科する。

が加えられた。

かくして、日本中から野良ゆっくりは人々の手により駆逐され、数を減らしていった。 
しかし、ゆっくりの繁殖力たるや、常識では計り知れないものがある。 
2つあるだけで、それを放置していればあっという間に数を増やすものだ。 
その為、人々が野良ゆっくりに対してこのような扱いを取るようになってからも、 
日本にある野良ゆっくりの数はまだまだ多いと言わざるを得なかった。 
…それでも、野良ゆっくりの数を減らせただけでも驚嘆に値するのだが。

しかし、まだ野良ゆっくり達にとって地獄は始まってすらいなかった。 
日本政府は、加工所で研究を進めつつ、着々とゆっくりの生態について突き詰めていた。 
そこから、野良ゆっくりを徹底的に駆除する方法を模索し、結論が出た。 
そして今日、ほぼ満場一致で野良ゆっくりを日本から絶滅させるべし、の案が通ったのだ。 
いよいよ、国が野良ゆっくり絶滅に向け動き出したのだ。


今日は休日だと言うのにそれほど人は多くない。 
それでも外にいる人々はいつもと変わらない毎日を過ごしており、野良ゆっくりを見かけたら潰したりしている。 
人々は、電柱や壁に貼られたビラを見て足を止めたり、何やら談笑しているようだ。

日本全国に、数か月前からあるビラが配られている。 
内容を要約するとこうだ。 
全国各地で一斉駆除を行うこと。駆除の手順、また駆除をしている際、住民の方々に配慮、容赦してほしいことについて。 
同時に、ゆっくりを飼っている場合、それを加工所にて数日預かり、加工所で飼いゆっくり登録も同時に行う。 
登録の内容、手順としては…という旨がそこに記されていた。

突然街にサイレンが鳴り響く。その後、放送が流れ出した。

【今から1時間後、一斉駆除を行います。飼いゆっくりを外に出している方は…】

駆除を告げる放送だ。それに備えてか、加工所の制服を着た人間が街中でせわしなく動いている。

「あと1時間か~待ちわびたよ、この日を。」 
「俺は楽しかったけどな。もう何匹野良を潰したか分かんねえもん。」 
「それもそうだな。この駆除、日本から野良がいなくなるまでやるんだろ?」 
「らしいな。俺は政府もやる時はやるんだなって思ったよ。」

その様子を見ていた2人の若者が談笑している。 
一斉駆除と言っても、丸一日かけて野良ゆっくりをある程度駆逐する、というものではない。 
日本全国で、加工所によって全ての野良ゆっくりが駆除されたことを確認するまで続く、というものだ。 
この2人はそのことについて和気あいあいと会話していたが…

「ゆ!どりぇいだよ!おきゃーしゃん!」 
「そうだねおちびちゃん。ちょっとまっててね…おい!どれい!」 
「…あ?俺らのこと?」 
「あたりまえだよ!れいむたちはおなかぺこぺこだよ!はやくあまあまよこしてね!」 
「なぁ、どうする?潰す?」 
「うーん…もうすぐいなくなるんだろ?ならほっといてやろう。」 
「そうだな、行くか。」 
「ゆがあああ!はなしをきけええ!」 
「お前ら、あと1時間後には皆殺しらしいぞ~じゃあな~!」 
「はぁあああ?いちじかんってなんなの?わけわからないこと…ゆぁああああ!まてええええ!」

もうすっかり野良ゆっくりの扱いにも慣れたものである。 
日本全国で野良ゆっくりを国民が殲滅しているとはいえ、まだまだ野良ゆっくりの数は多いと言わざるをえない。 
ゆっくりと言うものは、2つあるだけで恐ろしいスピードで増殖するものなのだ。 
その為、今日から行われる駆除には国民から期待が寄せられていた。 
ちなみに、駆除を妨害したりすると公務執行妨害となるが、妨害などとんでもないことで。 
むしろ、有志が集い駆除を手伝う動きもみられるほどだ。

一方、加工所職員はと言えば、街中に大型のスピーカーを設置している。 
地図を見、場所に狂いがないようにとずいぶん慎重である。 
やがて設置が終わったのだろう職員達は街の至る所へとバラバラと散っていった。 
そして、いよいよその時がやって来た。 
駆除開始の放送が終わった後、一斉にスピーカーのスイッチが入れられる。

【ゆっくりしていってね!!!】 
「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」

スピーカーの声に反応して、街がゆっくりの声に包まれる。 
窓ガラスはビリビリと揺れ、道端、路地裏、軒下、ありとあらゆる場所からゆっくりの声が響いてくる。 
それを皮切りに、一斉駆除が始まった。

《それでは各班、行動を開始してください。》 
「了解。よし、各自行動を開始。」 
「「「了解!」」」

街中の至る所に、班分けされた加工所の職員達が配置されている。 
加工所のオペレーターからの指示を受け、彼らは動き出す。

「ゆっくりしていってね!!!」 
「ゆっくりしていってね!!!」 
「ゆっくりしていってね!!!」 
「ゆっくりしていってね!!!」 
「ゆっくりしていってね!!!」 
「ゆっくりしていってね!!!」 
「ゆっくりしていってね!!!」

ゆっくり達はというと、スピーカーから流れる声に反応して、ただその場で同じ言葉を繰り返すだけだ。 
その表情からは、現在の状況に対する疑問も、不安も、まるで見えない。 
どれもこれも胸を張り、誇らしげな顔で叫んでいる。 
街のありとあらゆる場所に存在するゆっくりが、例外なくこの状況に陥っていた。

「ゆっくりしべっ!」 『グチャ』 
「ゆっきゅちちちぇいっちぇべぼょ!」 『ドスッ』 
「ゆっくりしていっべぼぉあああ!」 『ドンッ』

目につくゆっくりは職員によって手当たり次第に潰されてゆく。 
可能な限り駆除を効率よく進めるために、駆除担当は訓練を受けている。 
手に持った長い棒のようなもので成体ゆっくり、子ゆっくり、赤ゆっくり、大きさに関係なく 
的確に中枢餡を貫いて駆除を進める。

「ゆっくりしていってね!」 
「ゆっくりしていってね!」 
「ゆっきゅちしちぇいっちぇね!」 
「ゆっきゅちしちぇいっちぇね!」 
「この中か…」 『カチャッ』

この職員は、家の軒下に潜むゆっくりを発見したようだ。 
手に持った長い棒をいじった後、おもむろに軒下に突っ込む。

『カチッ。プシュッー!』 
「ゆっくり…ゆぼおおおおおおお!」 
「ゆっくうべえええ…」 
「ゆぎゅげえええ!」 
「ゆびゅ!ゆびゅうううう!」 
「…よし。」

職員が棒の根元にあるスイッチを押すと、棒の尖端が開きそこからガスが噴き出す。 
ガスは、濃縮した唐辛子のエキスを用いている。 
辛いものが毒物となるゆっくりにとっては、致死性の毒ガスとなる。 
ガスを噴射した後、職員は耳を澄ますが声が聞こえてくる様子はない。片付いたようだ。 
別の場所では、市民が職員に話しかけていた。

「すいませーん、職員さん。ちょっといいですか?」 
「はい、どうしましたか?」 
「あっちの方でゆっくりの声が…」 
「そうですか。案内をお願いします。」

市民に連れられて向かった先には、今はもう使われていない排水溝があった。 
その奥深くから、ゆっくりの声が聞こえてくる。

「この奥らしいんですけど…どうしようもなくて。」 
「分かりました。こちらの方で駆除しておきますので。」 
「え、あ、はい…できるんですか?」 
「はい、お任せください。」

そう言いながら、職員は携帯電話を取り出す。

「駆除車をお願いします。A-24地点です。」 
《了解。すぐに派遣します。》

職員が電話をかけてから数分後、1台のワゴン車が到着した。 
車体には、加工所のロゴマーク、ニコニコ笑顔のゆっくりれいむが刻まれている。 
これが、駆除用の様々な機材をもつ「駆除車」である。

「お待たせしました。何が必要ですか?」 
「駆除用のラジコンですね。この奥にいるみたいなので。」 
「わかりました。ラジコンは慣れが必要なのでここは僕がやっておきます。駆除にお戻りください。」 
「ありがとうございます。あなたも、ご報告ありがとうございました。」 
「はぁ…お役に立てたみたいで何よりです。」

やがて駆除車を依頼した職員と、連絡を入れた市民は去っていった。 
加工所が初めに想定していた予定より、大分早く駆除は進んでいる。 
このように、一般人も進んで駆除に参加したり、職員に連絡を入れたりするからだ。

「さて、と。」

職員は駆除車の中からラジコンを取り出す。 
これには、様々なギミックが取り付けられている。 
例えば、こんな奥まった場所であろうと、ラジコンに取り付けられた暗視カメラが画像、音声を送信する。 
その他、様々な地形を踏破するために設計されており、ゆっくり程度の行動範囲などたやすく上回る。 
職員は電源を入れ、排水溝の奥へとラジコンを進ませてゆく。

「お、いたいた。番か。しかも子持ち…」 
「ゆっくりしていってね!!!」 
「ゆっくりしていってね!!!」

大分奥まったところで喚き散らす2つのゆっくりがいる。 
片方には、頭から茎が生えており、全てが両親の堂々とした声を聞いて安らかに揺れている。 
職員はラジコンをゆっくりのすぐ傍まで近づけると、リモコンのボタンを押した。

『シャコン!』「ゆっぐ…!」 
『シャコン!』「ゆっ!」 
「…!……!」 『ボトボト』 
「…もういないみたいだな。さすがにここでのゴミの後始末は無理だな。」

ラジコンから針が飛び出し、ゆっくりの体内に直接唐辛子エキスを注ぎ込む。 
注ぎ込まれたエキスは茎にも影響し、茎から生えた赤ゆっくりは全て苦悶の表情を浮かべた後、 
どれもぶるぶると震えながら黒ずみ、声もなくぺちょりと地面に落ちた。 
駆除を終えた職員は、携帯で電話をかける。

《はい、加工所本部です。》 
「A-24に派遣された駆除車です。駆除は完了しました。」 
《ご苦労様でした。A-8地点で要請がありましたので、至急向かってください。》 
「了解。」

職員はラジコンを回収し、駆除車を走らせる。 
こうして、街中で多くの駆除車が見られる。 
すべて、ゆっくりを殲滅するためだけに動いているのだ。

その活動は、街だけに及ばない。 
当然、野山や森にもゆっくりは生息している。それらの駆除も徹底して行う。 
野山が、森が、街と同じようにゆっくりの声に包まれる。

「それでは各自、自衛隊の人たちと協力し、駆除を進めてください。」 
「各員、加工所の方々と連携し、迅速に駆除を進めること!」

こういった場所では体力、機動力に優れる自衛隊も出動し、加工所職員達と共に駆除にあたっている。 
訓練も加工所と合同で行っている。訓練に使うゆっくりは無尽蔵だ。全員まんべんなく訓練を行えていることだろう。

「ゆっくりしていってね!!!」 
「ゆっくりしていってね!!!」

一際野太く、大きい声で叫んでいるのはドスまりさだ。帽子の上には側近のぱちゅりーが乗っている。 
その存在感は圧巻と言うべきだが、悲しいことにほかのゆっくりに漏れず、他の一切の行動は不可能となっている。

「ゆっくりじで…!」 
「ゆっきゅちちぶぼお!」

駆除に当たる全ての人間は、ドスまりさなど意にも介さず淡々と駆除を進める。 
ドスもぱちゅりーも群れを収める役目を担っていたからであろう、 
怒り、憎しみ、悲しみ、絶望、負の感情が入り混じった何とも言えない目で駆除の光景を眺めている。 
しかし、それが伝わることはない。人間は皆、自ら居場所を叫ぶゆっくりを駆逐しており、 
誰一人としてドスやぱちゅりーに目を向けることなどないのだ。 
やがて、一人の自衛隊員がドスとぱちゅりーに近寄る。

「ゆっくりしていってね!!!」 
「っとぉ…高いな…よっと。」 
「ゆびゃっ!」 
「ゆっぐりじでいっでね!!!ゆっぐりじでいっでね!!!」

多少高い位置にあるが、的確にぱちゅりーの中枢餡を貫く。 
ドスは涙を流すことしかできない。しかしその涙が誰かの心を打つことなど一切ない。

「すいませーん。職員さん。」 
「はい?」 
「この大きいのはどうすればいいんですか?」 
「あー中枢餡には届かないので、体の中に直接かけてやってください。」 
「あぁ『ドスッ』分かりました。」 『プシューッ!』 
「ゆっぐびびべぼぉおおおあ!」

体内に直接ガスを注ぎ込まれたドスは、餡子を濁流のごとく吐き出す。 
口を閉じればまだ助かる見込みはあるかもしれないが…

「ゆっぐびびべぼぅえええ!ゆっぐりじべいっべべべ!」 

今の状況では、それすらかなわない。ただ〝ゆっくりできる言葉〟と同時に餡子を吐き出すのみだ。 
一言口走るたびに餡子が確実に失われてゆくのを感じながら、ドスは群れが全滅させられる様を眺めるしかなかった。 
そんなドスを気に留める者など一人もいない。 
やがて、付近一帯で全てのゆっくりの声が止んだ後、ようやく人間は去っていった。 
といっても、別の場所でゆっくりを駆逐するためでしかないが。

「よし、こんなものかな…各自担当範囲内の見回りは完了しましたか?」 
「はい、問題ありません。」 
「こっちも大丈夫です。」 
「ゆっくりの声は一切聞こえてきません。」 
「ご苦労。では…」 
《はい、加工所本部です。》 
「こちらN班、担当範囲内の見回りを完了しました。」 
《了解。U班からの報告がまだなので、それが完了次第、機材とゴミを回収して終了してください。》

駆除を完了した後は、班ごとに定められた範囲を徹底的に見回りする。 
その後、駆除を完了した地域に加工所の監視員を配置し、ゆっくりが再び発生していないかを見守るのだ。

この様にゆっくりを駆除しているかとだけ思いきや、別の活動も行っている。 
各家庭から、飼いゆっくりを一時的に回収する作業だ。

『ピンポーン』「すいません、加工所の者ですが。」 
「あ、はーい。」

各家庭を、加工所の駆除車とはまた違う車が訪問して回っている。

「ゆっくりは飼ってらっしゃるでしょうか?」 
「はい。」 
「そうですか、お宅のゆっくりの回収に伺いました。」 
「えぇと…これでいいんでしょうか。」 
「ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 
「一応、お家の中をチェックさせていただきます。」 
「はい、どうぞ。」 
「…オッケーです。ところで、加工所での登録内容はお読みいただいて…?」 
「はい、大丈夫です。」 
「ありがとうございます。バッヂは…はい、確認しました。では、数日後にまたお返しいたしますので…」 
「よろしくお願いします。れいむ、いい子にするのよ。」 
「ゆっくりしていってね!!!」

加工所にてバッヂに加え、更なる飼いゆっくりの詳細な登録を行うために各家庭を回り、 
こうして回収して回るのだ。 
新たに定められた法により、1家庭にゆっくりは1つとは定められているが、 
飼っている場合もいない場合も、念のため専用の機材を用いた上で、隠していないかの入念なチェックは怠らない。 
別の家庭では…

「では、回収させて…」 
「あ、あの。」 
「はい?」 
「その…引き取って…もらいたいんですが…」 
「ゆっくりしていってね!!!」 
「その場合、駆除の対象になりますが。」 
「…お願いします。」 
「ゆっぐりじでいっでね!!?」 
「承知しました。ではこちらに口座番号を…」

昨今のゆっくり憎しの風潮から、ゆっくりをもう飼いたくない、という人もいるものだ。 
そういう人に対しては、加工所で引き取った後、バッヂのクラスに応じて補償金が支払われるサービスも行っている。 
突然駆除されると告げられたゆっくりは涙目、涙声ながらそれでも同じ言葉を繰り返すことしかできない。 
さらに別の家庭では…

「あのー、引き取ってもらいたいんすけど。」 
「これは…バッヂがありませんね。駆除の対象になります。」 
「は!?あ、いや!バッヂ無くしちゃってー!金バッヂなんですけど!」 
「バッヂはショップで再発行できます。また後日伺いますので、それまでに…」 
「…あー…いや、いいっす。引き取ってください。」 
「分かりました。では、失礼いたします。」 『ガチャン』 
「…くそっ!金貰えると思ったのによ!」

〝引き取ってもらう場合は補償金がもらえる〟と聞いてその辺で野良をとっ捕まえてくる人も当然いる。 
そういう場合に備え、バッヂがなければ駆除の対象としている。 
バッヂの偽造対策に、バッヂ認証用の専用の機械を用いるため、偽造も困難である。 
最もバッヂを偽造した場合は罪に問われるため、そこまでする人はなかなかいない。

しかしなぜ、駆除と回収を同時に行うのか。 
ゆっくりは「ゆっくりしていってね!!!」という言葉に反応し、大声で叫びだす。 
その習性を用い、駆除においては場所を知ると同時に他の一切の行動を不可能にし、駆除の効率を高める。 
回収においては、ゆっくりが否応なく叫ぶため、ゆっくりを隠すことも困難にしている。 
もっとも、野良を拾ってくる物好きがそうそういるわけはなく、 
にも拘らず隠すということは何か後ろめたいことがあるからなのだが。 
逮捕者こそ出なかったが、おそらく違法販売用、もしくはそれにより購入されたであろうゆっくりが、 
この駆除によって消された。

そして、駆除が始まってから約1年が経った。 
街から、森から、山から、もうゆっくりの声はほとんど聞こえない。 
聞こえるとすれば、もう大分数を減らしたゆっくり愛好者が散歩している時くらいだろう。

今日は、いよいよ監視役に回されていた加工所職員が解放される日である。 
そう、政府による生中継で、野良ゆっくり絶滅宣言が出されるのだ。 
普段テレビと言えば家庭によってチャンネルが違うが、今日ばかりは何処の家庭も同じチャンネルを映している。 
まるで昔の紅白歌合戦の様である。

「みなさん、今日はお集まりいただきありがとうございます。」

首相が仰々しくスピーチをしている。 
会見場には報道陣も集まり、ずいぶんと華やかな様子だ。

「これが、日本最後の野良ゆっくりです。」 
「ゆがぁああ!れいむをはなぜええこのどれいいいい!」

首相の前に、れいむが置かれる。 
ずいぶんと薄汚れているが、虐待などを受けた様子はない。 
首相は、秘書から真っ赤な液体の入った注射を受け取ると、おもむろにれいむに突き刺す。

「…」 『プスッ』 
「ゆ゛っ!ゆっゆっ…ゆっ……ゅ…」 
「…これで、日本から野良ゆっくりはいなくなりました。ここに、野良ゆっくり絶滅宣言を出させていただきます!」

中身を注入すると、れいむは痙攣しながら少しずつ目を閉じ、やがてただの饅頭に戻った。 
そして、首相から野良ゆっくり絶滅宣言が出されると、一斉にフラッシュがたかれる。 
ここに、野良ゆっくりが日本から一匹もいなくなったことが宣言されたのだ。 
次の日は日本中でお祭りムードであった。 
次の日の新聞の一面は、首相が絶滅宣言を出したシーンが飾った。 
こうして、晴れて野良ゆっくりは日本からいなくなったのだ。



あれから数年が経ち、街からは完全に野良ゆっくりは消えた。 
というより、ゆっくりの姿自体がまばらである。

駆除完了後、飼いゆっくりを飼うという行為に対しても制限が設けられた。 
ゆっくりを飼うにあたり、試験制度が導入されたのである。 
ゆっくりの基礎知識から生態、飼う際の注意点まで。 
問題自体そこそこ難しい上、合格点のラインは自動車学校のそれとほぼ同等。 
結果、よほどの愛好家でない限りゆっくりを飼わなくなったのだ。

加工所にも変化が見られた。 
今まではゆっくりの駆除業務に追われていた加工所であったが、 
その必要性が薄れて以降、その名の通り、ゆっくりの「加工」がメインだ。 
中の様子を覗いてみよう。

どすまりさ…だけでなく、その他にもどすれいむやどすちぇん、どすありすとでも呼べるものが、 
均等に並べられている。 
近年の研究により、ゆっくりを強制的にどす化させる薬品が開発されたのである。 
それぞれのどすの頭には白くドロドロとした精子餡の入った容器が突き刺さっており、 
だらしなく開かれたまむまむから、大量の赤ゆっくりが絶え間なく生み出される。 
スライダーを通って下を走るコンベアに落ちると、 
どれもこれも、「ゆっくりうまれたよ!」等とほざいた後、 
その場で泣き出したり、うぞうぞと動き出したりするが、 
コンベアの両端には返しのついた壁があり、逃げ出すことなど到底できそうにない。

やがてしばらくコンベアが進むと、上からバーナーが赤ゆっくりの群れを容赦なく炙る。 
全身まんべんなく炙られ、喋ることもできなくなった赤ゆっくり達は、 
次は特殊な薬品のシャワーを浴びせられる。 
シャワーを浴びた赤ゆっくりたちは、ぶるぶると震えたかと思うと、 
ありえない速度でぐんぐんと成体ゆっくりまで成長する。 
通常、数か月かけて成体までなるところを一瞬で行うのだ、途方もない激痛が全身を襲うが、 
そんなものはお構いなし。先ほど炙られたため喉が焼付いたか口が溶けたかで、叫ぶことすらままならない。 
元々炙る工程はなかったのだが、周囲への騒音公害を配慮した結果、この工程が加えられた。 
現在、加工所の研究チームによって、「口のないゆっくり」の開発が遺伝餡研究によって進められている。

と、1つのどすれいむが、目から光を失ったかと思うと急速に黒ずんでいく。 
製品としての寿命が訪れたのだ。 
するとどすれいむの足場が開き、下へと落ちていく。 
下には巨大なミキサーが待ち構えており、物言わぬどすれいむを切り刻む。 
直後、足を焼かれた成体れいむがどすれいむのいた場所に置かれる。 
逃げたいのだろうぐーねぐーねと気味悪くもがいているが、動くことはできない。 
職員が明らかに毒々しい色の液体の入った容器をれいむに突き刺すと、 
先ほどの赤ゆっくりたちのように、急激に成長しどすれいむが出来上がった。 
赤ゆっくりが成体になるのとはわけが違う、形容しがたい痛みに苛まれるが、 
知ったこっちゃない、こうしてものの数分で新たなゆっくり製造機の出来上がりだ。 
ちなみに切り刻まれたどすれいむは、赤ゆっくりに噴霧される液体の原料になる。 
どす化する薬品はなかなかお値段が張るが、その後体内に残った成分だけで、 
赤ゆっくりを成体ゆっくりに出来る程度の効果は残されている。資源は大切に。

別の場所を見てみよう。 
ゆっくりの品種改良などを行っている研究所だ。 
今は、先に述べた口の無いゆっくり、「口無しゆ」の研究が目下進められている。 
研究の方法は単純明快。 
口を溶接したゆっくりに精子餡を擦りつける。 
そうして生えてきた茎に実った赤ゆの口を溶接し、成長促進剤を注入する。 
成長した赤ゆにまた精子餡を擦りつける。この繰り返しだ。 
口無しゆ研究ブースには、常に「ゆっくりにお口はない」というドスの言葉が流れ、 
でかでかと壁に埋められたテレビには、口無しゆ達が楽しそうに跳ね回るシーンが、 
いかに口無しゆがゆっくりしているかというナレーション付きで延々と流れている。

はたして、こんな単純な方法で口無しゆが出来上がるのか?出来る、出来るのだ。 
日本には蚕という家畜化動物の前例がある。 
ましてや蚕よりはるかに繁殖、世代交代のスピードを速めることに成功したゆっくりだ。 
実際、口の無いゆっくりはそこそこの割合で誕生している。 
それらを掛け合わせ、更に口無しの純度を高めるのだ。 
でたらめな生態を持つゆっくりだからか、たまに目やお飾り、はては中枢餡など 
なにかしら別のモノが「無い」ゆっくりが出来上がるものの、 
じきに、口の無いゆっくりの生産が安定すると予定されている。 
目やお飾りのないゆっくりも、それはそれで交配が進められている。 
研究所の最終目標としては、中枢餡と生殖機能以外は何もない、 
「繁殖する饅頭」の完成を掲げている。

こうして、ゆっくりは加工所という生産所の中で、 
一生をゆっくりすることなく、モノとしての生涯を終えてゆくのであった。


「…ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ…!」

森の中を、走る饅頭が一つ。ゆっくりまりさである。 
自慢のお帽子は、何かがちぎられた痕があった。 
それは、飼いゆバッヂ。各家庭ごとの個体識別番号が登録されている。 
ゆっくりを飼うこと自体厳しくなったこのご時世に珍しく、 
飼い主が飽きて捨ててしまったのだ。 
バッヂをちぎったのは、誰が捨てたのか分からなくするため。

「…ゆぅ、ここは…」

夜中に放り出された外の世界は不安だらけで。 
飼い主を捜して走って走って走り続けて、がむしゃらに走り続けて、 
いつのまにかまりさは、森の中にいた。 
野良がいなくなった世界とはいえ、その遺伝餡に刻まれた記憶が、 
まりさに郷愁を呼び起こさせていた。

「ゆぐっ、ゆぇえええええん…おでえざん、どぼじでええええ…」

それでも、やはり怖いものは怖い。 
暗い森の中に独りきり。夜が明けても独りきり。 
優しかった飼い主はもういない。 
今の世は、飼いゆっくりの知能はかなり高い。 
それが逆に、まりさに「捨てられた」という事実を悟らせてしまう。 
その時だった。

「ま、まり…さ…?」 
「ゆゆっ!?」

まりさを呼ぶ声。 
振り返ると、そこにはゆっくりれいむ。

「…れいむも、すてられちゃったの…?」 
「……うん…」

れいむのおリボンも、やはりバッヂがちぎられた痕があった。

「ゆっ、ゆっぐ、ゆっぐ」

れいむが子ゆのようにゆんゆんと泣き出す。 
無理もない。突然、ゆっくりにとってはあまりにも厳しい世界に、 
愛した飼い主の手によって放り出されたのだ。 
そんなれいむに、そっとまりさがすり寄る。

「すーりすーり、すーりすーり」 
「ゆぐ…まりさ…」

れいむと出会ったこと、そして泣き出すれいむを見て、 
まりさの中に強い感情が湧きあがってきていた。 
そして、まりさにすーりすーりされたれいむにも。 
それは、遺伝餡に刻まれたもの。 
まりさは父に、れいむは母に。 
このれいむを守って、強く生きよう。まりさはそう硬く決心した。

「れいむ、まりさのおよめさんになってね!」 
「…!ゆっくりしていってね!」 
「ゆっくりしていってね!」

この日、夜の森の中で一つの番が出来た。 
このゆっくりにとってあまりにも厳しい時代に、 
幾重もの奇跡が重なり、2つは出会った。 
まりさとれいむは、この森の中で今日にでも子を設け、 
やがて、また野良ゆが繁殖してゆくのだ。 
まりさとれいむが連なって歩いてゆく。 
やがて、木の下に大きな洞を見つけると、その中に消えていった……


















「発見しました。逃げたまりさ種とれいむ種です」 
《了解しました。こちらで確認したところ、先ほど繁殖活動を済ませているようです。》 
「こちらでも確認しました。植物性妊娠の様です」 
《取りこぼしの無いよう、細心の注意を払って下さい》 
「了解」

時刻は午前2時。 
そんな時刻でも、加工所職員はこのような事態に対して迅速に行動する。 
飼いゆっくりの個体認識にはもう一つ方法がある。中枢餡に埋め込まれたチップだ。 
通常であれば問題はないが、チップとバッジが一定以上の距離を保ったまま、 
一定の時間が経過すると、加工所の監視センターに報告が行く。 
そしてチップ内部に埋め込まれたGPSが正確にゆっくりの場所を送信し、 
例えGPSが届かない場所でも、加工所特注のハンディレーダーを使えば、 
任意のチップの場所を特定することができる。特定範囲は半径10km以内だ。 
更に、繁殖活動が行われれば特殊な信号が発信されるようになっている。 
現在では、加工所以外でのゆっくりの繁殖は禁止されているため、 
この信号が発信されることはごくごく稀であり、 
万が一このような事態があれば、駆除車がサイレンを鳴らして現場に急行する。

「ずいぶんと気持ちよさそうに眠ってやがる…」

もともと危険とは無縁の世界で暮らしてきた上に、 
子作りをしたばかりで疲労困憊の2つは、 
懐中電灯の光をまともに浴びても安らかな寝顔を保ったままだ。

「まずは…」 『ぶちっ。ブチュル!』

れいむの額の茎を中ほどから手折ると、 
苦悶の表情を浮かべる赤ゆ達を一瞬ですべて握りつぶす。

「これでも起きないか…まぁ、有難いがな」

ゆっくりの身に、どのような奇跡が、いくら折り重なろうとも、 
人の手から逃れることなど到底不可能だ。 
ゆっくりに本当のゆっくりが訪れることなど二度とない。 
ゆっくりの、ゆっくりとした世界は、かつてゆっくり自らが破壊したのだ。 
人間を本気にさせたことで。 
そうしてゆっくりに訪れるのは、永久に続く破滅だけ……

「じゃあな、お饅頭」 『ぐちゃっ』


【おわり】