さて、私の前に一匹のまりさが居る。 
 バッチをつけていない、帽子の先が折れている、ブロンドにゴミクズがこびりついている、そもそもブロンドが薄く剥げかかっている、足が煤だらけで黒い、そして面が間抜けなほどに俗物っぷり。 
 遠まわしに言い過ぎたが、コイツは 
「ゆへへ、せいっさいされたくなかったらあまあまをよこすのぜ?」 
 野良でゲスで頭の悪いゴミクズだ。



「で、まりさ。人間に勝てると思ったの?」 
 案の定、私はまりさを完膚無きまでにいたぶった。もし、まりさに体当たりでもされたら私のジーンズが汚れてしまうからな。 
「ひゅー……ひゅぅうう……」 
 右の頬に蹴りを加えた際に口が裂けてしまったようだ。上手く喋れない為か、私を両の目で睨んでくる。そこには、人間ごときに、とか、手足があるから卑怯だ、とか自分を正当化することしか考えていないんだろうな。 
「なあ、まりさ。僕は正直やりすぎたと思っているんだ」 
「ぞうだ……おばえはひぎょうものだ……」 
 それなら完膚無きまでに論破してやろうじゃないか。 

「一先ず、卑怯とかはおいておこう。まりさよ、元々お前はなんで俺に突っかかってきたんだい?」 
「それは……くぞにんげんがあまあまとかゆっぐりできるおうぢさんをどくぜんじでるから、いだいなるまりざざまがせいっざいじであまあまどゆっkぐりぷれいずをどりがえずだめなのぜ……」 
「ふむふむ。まりさは人間とゆっくりには同じ権利があって平等だって考えているんだね。だから、その禁を破って独占する人間さんが悪いと。うん、そうだね人間さんが悪いのかもね」 
「そうなのぜ! だがら、はやくあまあばをよごぜぇええ!!」 
 予想通りに調子にのってきた。さっきは平等だといったが、多分、ゆっくり出来ていない人間はゆっくりにとって蛮族だという考えがあるのだろう。また、命乞いの言葉として生命としての価値は平等だと喚くこともあるが、それならばこれはどうだろう。 
 お話を始める前に、口が裂けたままだと喋り辛いだろうと思い、水筒に入れていたリンゴジュースを口にかけてやった。 
「ゆへへ、まりささまのいだいさがわかったのぜ? それならもっとあま……」 
 下の歯を片足で抑えつけて、前歯を一本、素手で抜いてやった。 
「あーなんか言ったかい」 
「ゆんぎゃぁああああああああああああああ!!!!!!!!!」 
 悲鳴ぐらいは出させておいてよいだろう。前が見えないんじゃないかと思うぐらいにまりさの瞳から涙が滝のように流れ出る。そこら中を走りまわって壁に頭を打つ姿はなんだかコミカルだな。 
 落ち着いたところで再度話を始めよう。 
「まあ、まてよ。平等ってのならさ、まりさは私に攻撃してきたよね?」 
「せいっとうなせいっさいなのぜ」 
「私はさ、ゆっくりからあまあまを奪ったことがないんだよ」 
「ゆあ? なにをいってるのぜ?」 
「ゆっくりのルールの中におうち宣言ってのがあるだろ。人間はあまあまがおいてあるところを見つけてすぐにおうち宣言をしたんだ。そして、家にも宣言をした。正当性があるだろ」 
「ゆゆ、たしかに……でも、ゆっくりとにんげんはびょうっどうなんだからあまあまとゆっくりぷれいすをわけるのはとうっぜんのけんりなのぜ」 
「平等なら、まりさは人間と契約を結んだのかい?」 
「けいやく?」 
「あまあまを貰う代わりに何かを分け与えるってことさ」 
「それなら、ゆっくりはゆっくりできないくそにんげんをゆっくりさせてやってるのぜ」 
「当の本人たちがゆっくりできなかったら? また、契約を結んでいなかったら?」 
「でも、まりささまのゆっくりしたすがたをみられるのはとってもありがたいことなのぜ!」 
「それは平等じゃないな」 
「ふざけるんじゃないのぜ? ゆっくり「同じことを繰り返したくないからもう喋るな」」 
 すきっ歯に指を引っ掛けようとしたらすぐに黙ってくれた。暴力のパースエイドって便利だな。 
「じゃあ、まりさ。逆を考えよう。人間さんはゆっくりをゆっくりさせるために殴ってあげた。だからあまあまとおうちをちょうだいって言われたらどうする?」 
「それはひどいのぜ!! おうぼうなのぜ!!」 
「そうだな。とっても横暴だ。もし、そのゆっくりがてんこで、それでいいよ! って言ったら?」 
「それは、びょうどうなのぜ」 
「そうだな。てんこはいじめられるのが大好きだ。それも、人間に殴られるとなっちゃ喜んであまあまを差し出すだろうね。ようするに、これが契約だ。双方が納得することが契約なんだ。飼いゆっくりもそうだよ。ゆっくりを分け与えてくれるから人間はそれ相応の対応をするわけだ」 
「ゆぅ……」 
「でだ、まずは平等についてを話そう。私たちは同じように苦痛も感じるし快楽も感じる。楽しい時は楽しい辛い時は辛い。そうだろ」 
「そうなのぜ」 
「だから、平等なんだ」 
「ゆ?」 
「苦痛や喜びを感じることができるというのは生きる権利を持つということだ。それは平等で、絶対に侵害しちゃいけない権利なんだよ」 
「そ、そうなのぜ! なら、じじいははやくいしゃりょ「でも、最初に侵害したのは誰だい?」ゆぁ?」 
「まりさは私を脅したよね。あまあまよこせって。それは権利の侵害だよね」 
「ゆゆ、でも」 
「なにか?」 
「なんでもないのぜ……」 
「権利を侵害してくること。これは手段として存在することであり、やってもいいんだよ。でも、それに対して抗ってもいいんだ」 
「ゆ?」 
「平等つっても不当な扱いを受けることはあるさ。正当防衛は許されるってことさ」 
「じゃあ、まりさは」 
「確かに、まりさ達ゆっくりはあまあまをあるゆっくりプレイスを手に入れていない。それなのに人間は持っている。不平等だよな。なら、戦えばいいんだ。侵害すればいいんだ。そして力で手にいれれば良い」 
「ゆゆ、まりさはただしいのぜ!」 
「でも、それは力が圧倒的にないといけないんだ」 
「ゆあ? ただしいほうがただしいのぜ!?」 
「正しくてもソレを正しくするためには力がいるんだよ。正しいことを言っても通じるとは限らないじゃないか。平等と言ってもな、それは生きる権利が平等であって、何もしてこなければ平等なままなんだ。でも、もっと快楽が欲しくなると他の生き物から快楽を奪わないといけない。だから、力が強いと奪えるんだ。でも、ゆっくりはどうだい? 強いのかな?」 
「ゆゆ、おまえなんか」 
 さて、最後の締めくくりは暴力の偉大さを知ってもらうために、 
「まりさ、ゆっくりしていってね」 
「ゆっくり― 
  
「どうだった、ぱちゅりー」 
 私の飼いゆっくりであるぱちゅりーが窓越しからベランダの一部始終を見ていたのだ。 
「ねえ、ぱちゅりー。私の話はゆっくりできた?」 
 野良のまりさを懐柔して私の家を独占しようとしたぱちゅりーに現実の厳しさを教えてやった。 
「なら、ぱちゅりーはこの後どうなるか分かる?」 
 盛大にゲロを吐いた。そんなぱちゅりーを私はずっと見つめ続ける。 
「ぱちゅりーは生きる権利があるのかな?」