ゆっくりすいかとゆっくりゆうぎの二匹が率いる“ようかいのやま”。“こみゅっにずむ”“ゆっくりのあんこをあかくそめる”“すいきっしすと”など、いくつものイデオロギーを掲げたゆっくり全てを統一するための集団であり、山全体に多数存在する群の中で唯一存在する国家である。強きものが皆を守り国の剣となり、その国を支えるために弱き者は礎となり、ゆっくりを求めるため、最大多数の最愛幸福を目指すという方針を取る。 



 そのためには説得力も必要だが、まず第一に圧倒的な武力が必要だ。なぜなら、思想だけで群を守れるわけがなく、群を支える基盤として夜警国家のシステムを導入せねばならない。ゆっくりすいかとゆうぎは旗揚げをする前にその問題に直面していた。それを解決したのは、ゆっくりとは何たるかを求めて一人旅していたまりさの母れいむである。 
「なら、つよくすればいいんだよ」 
 “はくれいプラン”。この発明は後のゆっくりの文化に大きく関与する。 
「ゆっくりにはほんらい、どすまりさとおなじようにまりょくがひそんでいるんだよ。そのまりょくをあつかうにはさとるためのつよいこころがひつようなんだ。れいむができたんだからみんなもできるはずだよ」 
 魔力の存在の肯定。当初、すいかとゆうぎは信じることができなかった。だが、“ようかいのやま”が今とは違い小さな群でゲスの略奪に脅かされていた時に、れいむはひとりでゲスの群をひとつ壊滅させたのだ。れいむ種にそんな力はない。無いとすればどこからか力を得たに違いない。れいむの力を裏付けに、信じざるを得ななかった。 
「ゆ、れいむ、よければむれのみんなをじきじきにきたえてくれないかな?」 
 旅のゆっくりだから断られるかもしれないと内心不安に思っていたが、れいむはあっさり承った。 
「こころえたよ!」 

 後に研究者は“仙人ゆっくり”とそれらを呼称した。 
「ごはんさんはこれだけだよ!」 
「ぬれただけでしぬことはないよ! だからゆっくりみずをあびてね!!」 
「ここからとんだらしんじゃう? だいじょうぶ! ゆっくりはやわらかいからしなないよ!」 
「とげとげさんをふみふみしてもいたくないからだいじょうぶだよ!」 
 鍛錬は最初は優しく、段々と厳しく。だが、通常のゆっくりではありえない鍛錬のレベルへと進展していった。途中で落脱したゆっくりも少なくない。雑念を捨てられず飢餓に苦しんで死んだり、固定概念を棄てきれず崩れて死んでしまったゆっくり。 
 だが、それらに耐えぬいたゆっくりはゆっくりを超越した存在になった。食べ物は食べなくても十分活動でき、水の中を潜ることもできる。距離にもよるが、山にある大抵の高いところから落ちても無傷であり、その皮膚は捕食種の刃をも通すことはない。そして、最終手段として自身の魔力を体内に溜め込み爆発させ自決することも可能。さすがにドスまりさ以上の魔力は無く、ドススパークのように魔力を放つことはできない。例外としてすいかは炎を吐けるようだ。 
  
 このプランは最強の戦士ゆっくりを作るという点では最高の効果を上げていたが、最強の兵士ゆっくりを作るという点では欠陥が多すぎた。前述した脱落者の多さだ。兵士を量産できない訓練など、訓練とは言えない。 
 軍隊を作るにあたって、大事なのはそれなりの強さを均一に持ちつつ、安定して量産化できる兵隊を育成することである。そのことに気づき、れいむはすいか達に進言したが、 
「れいむはまちがってないよ! よわいやつはよわいだけなんだ! つよくないとだーめだーめだよ!!」 
 すいか・ゆうぎの気質がそれを破棄したのだ。負けた相手には絶対服従を誓う、すいかとゆうぎの勝負へのプライドは人生そのものであり、れいむは読み間違えた。 
 この群は絶対に滅んでしまう。自分の理想の群ではない。れいむはこの群から離れることを決断した。 

 れいむが群をさった後、様々な群を歩いて渡った。そのほとんどは基本種のみで構成されている群ばかりで、ドスや稀少種が支配する群には興味を持たなかった。なぜなら、善良なゆっくりがいる弱い群がいかに生き延びれるのかがれいむのなかでの目標に決まったからだ。 
「こうやって、じめんさんをほって、とげさんをうめて、すこしつちをかけるだけで、とつげきしてきたげすはあんよをいためるよ!」 
「きのえださんをつかうときはなるべくみっしゅうしてね!!」 
「べつどうたいをつかってほういっせんをかんがえてね!」 
「れいぱーがきたときのために、かおじゅうにどろさんをぬるんだよ! そしたらにんっしんしないよ!」 
「にげたらだめだよ。にげたらゆっくりできないゆごくにおとされるよ!」 
 ゲスに脅かされている群に戦うための方法を伝授していった。だが、それが効をなした試しはなく、群が全滅することもよくあった。 
 れいむは方法を伝授した後、その群を助けようとは思わなかった。なぜなら、これは試みだったからだ。どおしてたすけてくれなかったの、といった言葉はなんども聞いた。その度にれいむは、ありすたちがよわいらだよ。じごうじとくだね……」と。 
 生き残りもいくつか存在し、彼らを集め共に行動をするようになった。これが“あんこようっへいだん”と呼ばれる集団に進化する。 
『できることなら、ほかのみんなをたすけたいよ!』 
 生き残りのほとんどは善良なゆっくりで、また死線をくぐり抜いてきたゆっくりである。 
 このゆっくり達なら兵士としての教育が十分できるのでは? 
「それなら、そうしよう!」 
『ゆううううう!!!!!』 
 ゆっくり初の傭兵集団が誕生した瞬間である。群を助けて報酬をいくつかもらうという手段を取っていった。そうは言っても自給自足の生活が多かったのも事実だが。 
 いくつものゲスたちと戦い、また、志願兵を吸収し、群は大きくなっていった。志願兵の中にはゲスもいたが、態度がすぐに露見してリンチにあい、すぐに戦線から逃げ出したりなど勝手に消えてしまった。 

「そろそろ、ゆっくりぷれいすをさがそう」 
 ある日を境に、れいむは遠征の終りを告る。 
「たたかいつかれたよ……」 
 変わらない現状にれいむはもうあきらめていたのだ。 
『わかったよー…』 
 皆も同じ気持であった。帰属本能の高いゆっくり達にとって、ゆっくりプレイスがないのは苦痛以外の何物でもなかったのだ…… 

 リス等の害敵はいるものの理想のゆっくりプレイスを見つけ束の間の休息を得る。食料に関しては元々のものとれいむのノウハウが重なりあって自分たちが食べていける程度のものを確保できたが、土地のノウハウが無かったので余剰生産がままならなかった。それに、生き残りのゆっくりは皆善良で、群のリーダーを経験したゆっくりも少なくないので群づくりは坦々と進んでいった。 
「はやくあかちゃんがみたいね!」 
「そのためにはがんばらないといけないわ!!」 
『えいえいゆー!!』 
 そんなある日、れいむの元へ一匹のきめぇ丸がやってきた。 
「いったいなんのようなの!?」 
「さらっちゃうわるいゆっくりはたいじするよ!」 
 普通のゆっくりならば『き、きめぇ丸だぁあああああああああ!!!!!!!』と阿鼻叫喚の渦に巻き込まれていたところだが、歴戦の勇士であるゆっくりは違う。この身でゲスを撃退し、捕食種との戦闘もこなした経験は伊達じゃない。 
「おお、おお、ひどいことはしないですよ?」 
「それじゃあ、なんのよう? ゆっくりしないでおしえてね!!」 
「おお、わがぬし、すいかとゆうぎからのおたっしです」 
「すいかがどうして?」 
「あなたたちのうわさをききつけて、わがふたりのぬしどのはきょうみをもっているのです。にかいひがおちたとき、そちらにあいにいくのでよろしくおねがいします」 

 すいかの群はれいむの考えとは裏腹に、大きく領土を広げていた。群を説得し傘下に入れるのは難しく、ほぼ武力による強攻策が取られた。負けたゆっくりをとことんゲスにし、自分たちの思想を埋めつけ、シヴィリアンコントロールを次々とこなしていったのだ。武力に関して問題点があるとれいむは指摘したが、“はくれいプログラム”による兵士ゆっくりの生産は適度の数を生み出すことができていたのである。一騎当千をコンセプトに作られた兵士ゆっくりは、群に一匹ずつ配置され、周辺のゲスを駆除する。そして、治安に関しても一匹でそつなくこなす。また、稀少種であり捕食種のきめぇ丸・ゆっくりにとりの協力を得られたのも大きい。 
 こうして、山に存在するコロニーはあっという間に“ようかいのやま”が支配していった。そしてその驚異はれいむの群も例外ではない。れいむは正直にこのことを話した。 
「ゆん、そのへいたいさんたちはれいむみたいにつよいんでしょ。ほっぺさんにきずがあるみょんやしっぽがいっぽんのちぇんもれいむとおなじつよさをもってるけど、れいむよりはつよくないし。なによりかずが……」 
『ゆあぁぁ……』 
 絶望のムードが漂う。今まで創り上げたものが奪われてしまう。何よりもプライドが粉々になってしまう。屈辱だが、現実を考えれば…… 
 そんな空気を切り取るかのようにれいむは宣言した。 
「だから、れいむはけっとうすることにしたよ」 
  
「さて、ようけんはわかっているかな」 
 200を超える兵士ゆっくりを従え、ゆうぎは問う。 
「ゆ、わかっているよ」 
「こたえは?」 
「ちぇん」 
「………わかったよー」 
 覚悟を決め、ちぇんはれいむの頭からりぼんさんを外した。 
「……こうふくのしるしかえ?」 
 ちぇんはりぼんさんをれいむの口元に持ってくる。 
「ちがうよ!」 
 れいむは自分のりぼんさんをゆうぎの顔に投げつけた。 
「けっとうだよ! れいむがまけたらいさぎよくさんかにはいるよ。でも、れいむがかったらあきらめてね!!」 
 角に引っかかったりぼんさんを払い除け、れいむを睨めつけた。 
「そのことば、よくおぼえておくんだね!!」 

 決闘のルールはゆうぎとすいかが決めたものである。力を競い合う種族である二匹にとって戦闘ほど神聖なものはない。そのため、後腐れなくするためには縛られない縛りのあるルールが欲しかったのだ。それは武器の仕様などあらゆる物を許可するが、審判が完璧に負けだとわかったときは負けにするという至極簡単なものである。勝利者は敗者に絶対服従。ちなみに、“ようかいのやま”のリーダーを決めるときにすいかとゆうぎが戦い、ゆうぎは勝利したため、ゆうぎが“ようかいのやま”の表向きのリーダーである。実質二人がリーダーと言っても差支えはない。 

 草木の生えていない広い広場をゆっくり立ちが円形状に囲む。その真中にはれいむとゆうぎ、そのセコンドとしてれいむ側には副リーダーのちぇん・みょん・まりさ・ありす、ゆうぎ側にはすいかのみ。 
「しんぱんはそちらがわからのものにするかい?」 
 ゆうぎが挑発まがいなことを口にする。だが、れいむの精神は常に冷静で、その手の挑発には乗らない。 
「そっちこそ、すいかにしてもらったら? おんじょうをかけてもらえるかもよ!」 
「けっとうはまだはじまってないからくちをとじてね!」 
 ガンを飛ばしあうがそこをすいかにたしなめられる。 
「すいかがするよ! いいね?」 
 両方、異論はなく賛同した。 
「じゃあ、はじめるよ。ゆっくりふぁいと、れでぃいいいいいいい」 
『ごぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!』 

 どちらも力が拮抗していた。 
「ゆ、ぐ、はっ!!!!」 
 角を使い、前へ前へと攻めながら牽制をするゆうぎ。すいかとの戦いでは、この突進で体力をへずり、攻撃の間も与えずに倒したが、 
「まだまだだよ!」 
 枝を髪飾りに挟んだ両方のモミアゲでそれをいなして後退していくれいむ。れいむは長年磨いてきた技と力でゆうぎの持つパワー以外のすべての能力に長けていた。だが、隙がなく懐に入ない。 
「ゆあああああああ!!!」 
 体力的な消耗を考えれば、れいむのほうが有利である。力をなるべく使わない、防御の技。だが、ゆうぎの突きは体をフルに使う突きなので消耗が激しい。更に付け加えれば、防御の隙がなさすぎて相手を思うように押し出せない。 
 これは確実に決定打を狙ってくる。れいむは自然と導きだした。 
「はっ!」 
「ぐうっ!!」 
 片方の枝が折れるアクシデントが起きた。虚を狙い、ゆうぎが勢い良く突っ込んできたので、大きく後退せざるを得なくなり、樹の枝が脆いことを計算せず右側のモミアゲも使って無茶をしたからだ。 
「そこだ!!」 
 隙を見逃さずゆうぎの懇親のジョルトが炸裂する。体を捻って突きを避けたが、左脇に掠れ、頬が切り裂かれ餡子が漏れ出した。が、 
「ゆだんしたね!!」 
 れいむの左のモミアゲは生きていた。角に掛かった状態であったのを体で察知し、中枢餡の方向に右目を貫いた。 
「うがぁ!!」 
 だが、浅い。ゆうぎの目から樹の枝を残して飾りから離し、急いでその場を離れた。そして、折れた枝を拾い、口に運ぶ。傷の深さのせいで、持久力戦のアドバンテージがゆうぎの方へと傾き、今度はこちら側が短期線で戦わねばならなくなった。次の一合が決着を決める。 
 動きに察知したのか、ゆうぎもすぐに体制を整え、こちらに向かってきた。 
「うぉおおお!!!!!!!」 
「ゆうぎ、むぼうだ!!!!」 
 霊夢の意図を唯一汲み取ったすいかはゆうぎを止めるが、遅かった。 
「しゃああああああああああ!!!!!」 
 無防備に口に枝を咥えたれいむ。ただ咥えているはずがない。 
 ゆうぎが相打ち覚悟で角を被る。体の中心を貫くためだ。 
「ゆがああああああああ!」 
 だが、被ったのがいけなかった。角を下げるために目線は地べたに移り、更に付け加えるとれいむは失明した右側に潜り込んだ。 
「ぷっ!!!!!」 
 渾身の力を込めて飛んだ樹の枝は、目に突き刺さったまんまの枝をプッシュする。 
「がっ………」 
 傷害致死レベルの傷を帯び、さすがに動きを止めたゆうぎ。後押しの一撃に、れいむは樹の枝に頭突きをかまし、その木の枝は中枢餡を貫きゆうぎを絶命させた。 
「れいむのかちぃいいい!!!!!!!!」 

 それ以来、“ようかいのやま”からは自治群の扱いを受けた。そして、勇ましく戦ったゆうぎとれいむを褒め讃え、絶対に恨みつらみの感情を持つこともなかった。それに加えて、ご飯が取れない次期に援助もしてもらった。 
「れいむ! ゆうぎにかったんだからりーだーをひきついでくれないかな!!」 
 更には、れいむの強さに惚れたゆっくりすいかに群のリーダーを変わってくれと懇願されるほどであった。 
 だが、れいむは断り続けた。なぜなら、れいむにはれいむのゆっくりプレイスのあり方をつかんできたからだ。国家や集団の縛りを受けない国家。そして、善意で皆と一緒にゆっくりしていくプレイス。何も言わずとも世界が綺麗に回る幻想郷をれいむは創り上げたからだ。 
 だが、次の世代にそのことを残せなかったのは残念であったが…  

 三国志時代の劉備・孫権・曹操の子孫が暗愚であったように。物を作り上げる力を持たぬものに発展は無し。ただ、腐らせるのみ。すべての物事はナマモノである。