ネタ被り、誤字脱字等ありましたらご容赦ください。

どちらかというと人間の描写が多いです。

虐待というほどの描写はほとんどありません。

 

 

 俺は親から受け継いだ、裏手には山があり向かいには田んぼが広がっている、そんな田舎の家に暮らしていた。

 

敷地は田舎だけあってそれなりに余裕があり、庭には柿や梅の木、そして小さいながらも畑があった。

 

これは両親が退職後に始めたものであり、そこで収穫した野菜が食卓に上ることもしばしばあった。

 

 休みの日には時折手伝っていたこともあり、両親亡き後も俺はその畑を維持することにしていた。

 

 畑には今、秋に向けてカブやニンジン、サツマイモなどをメインにした野菜たちが順調に育っている。

 

 そろそろ収穫する日にちを考え始めてもいいな、そんなことを思いながらその日の畑仕事を終え、家へと戻った。


 

 

 

翌朝、新聞を取りに玄関へ出ると、妙に騒がしい声が耳についた。

 

 田舎とは言え、近隣に全く人が住んでいないというわけではない。

 

 しかし、こんな朝っぱらから賑やかにするほど人がいるわけでもないし、何よりほとんどがお年寄りで、騒がしい、という感覚とはかけ離れている。

 

 俺は様子を見るべく、表へと出た。

 

 玄関の右手、畑の方からその声は聞こえてきていた。

 

「ゆおぉぉぉ!!じゃまなあみさんはせいっさいするよ!!いやならさっさとどこかへいってね!!」

「おとーしゃー!おにゃかしゅいちゃよぉぉ!!」

「まりさぁぁ、おやさいさんはまだなのぉぉ?れいむおなかすいたよおぉ!」

 

 この耳障りな声、聞き間違いようもない。ゆっくりだ。

 

 防犯も兼ねた砂利を踏みしめながら畑の方へと歩いていくが、その音に気が付かないのか、あるいは目の前の野菜に気を取られてそれどころではないのか、こちらに気付く素振りを見せるものはなかった。

 

 成体のまりさ、れいむが1匹ずつ。おそらくこれが親なのだろう。それを取り巻く形でやや小ぶりの子ゆっくりサイズのれいむとまりさが1匹ずつ、赤ゆっくりのまりさが1匹という家族のようだ。

 

「よぉお前ら、こんなところで何してるんだ?」

 

 俺はゆっくりたちに声をかける。

 

「ゆゆっ!?にんげんさんだよ!!ゆっくりしていってね!!」

「ゆっくちしちぇいっちぇね!」

「ゆっくりしていってね!」

 

 俺の声に気付いた成体のれいむがお決まりの挨拶をしてくる。それによってようやく俺の存在に気づいた残りの連中も続いた。

 

「ハイハイ、ゆっくりゆっくり」

 

 俺は適当に返事をする。

 

 するとゆっくりたちはそれが気に入らなかったのか、少しむすっとした様子でこの人間はゆっくりしてないだのなんだのと言葉を交わしていた。

 

「ところでさっきも聞いたが」

 

 そんなゆっくりたちに俺は再び声をかける。

 

「なんでお前たちはここにいるんだ?」

 

ゆっくりたちは改めて俺の方を向きなおすと、代表するように成体まりさが答えた。

 

「まりさたちはここにはえているおやさいさんをむーしゃむーしゃするためにきたんだよ!」

 

 薄々、いや、はっきりとわかってはいたのだがこれで言質もとれた。

 

 こいつらは、俺が育て上げた野菜を勝手に貪り食うべく裏山からこの畑までやってきたのだ。

 

「でもこのあみさんがじゃまでおやさいさんがとれなくてこまっていたんだよ!にんげんさん!このあみさんをなんとかしてね!すぐでいいよ!!」

 

 うちにあるのは前述のとおり、小さな畑だ。両親が始めたころは、囲いなどもない簡素なものだったのだが、ある日裏山からきたサルに作物を荒らされて以来、鉄パイプやネット、以前家を建て替えた際になぜか残してあった扉を再利用して入口付きの隔離された空間といった形にしてあった。

 

 当然虫くらいの生き物なら入ってくるのだが、サルは手出しができず、姿を見せることはめっきり減っていた。

 

 そしてこの成体まりさは、図々しくもそのネットを俺に外せというのだ。

 

「嫌だね」

 

「どぼしてそんなこというのおぉぉ?」

 

声を荒らげる成体まりさ。番であろう成体のれいむがそんなまりさに声をかける。

 

「ゆぅぅ…このにんげんさんもきっとおやさいさんをひとりじめするげすなにんげんさんなんだよ…」

 

 それを聞いた成体まりさが、キリっとした顔で俺に向かって言い放つ。

 

「かってにはえてくるおやさいさんをひとりじめするのはげすなことなんだよ!!わかったらさっさとまりさたちにおやさいさんをむーしゃむーしゃさせてね!!」

 

「チッ」

 

 ゆっくりが良く使うこの言い分を、知らなかったわけではないのだが、実際初めて目にすると俺はいら立ちを抑えられず、つい舌打ちをする。

 

 幸い野菜に被害があったわけではない。俺は一刻も早くこの場を立ち去りたい気分になったので、水やり用のホースを持つと、蛇口をひねった。

 

「ゆびゃぁぁぁ!つめちゃいよぉぉぉ!!」

「おみじゅさんはゆっくりできないいぃぃ!!」

 

ホースの先をつまみ、ゆっくりどもに向かって水をかける。あまりかけすぎてその場でふやけられても邪魔くさいので、そこまで勢いよく掛けているわけではないのだが、子ゆや赤ゆは驚いて騒ぎ始める。

 

「ゆぐぅぅ!なにするんだくそにんげん!!おちびちゃんたちがこわがってるだろぉぉ!!」

 

どうやら俺は  にんげんさん  から  くそにんげん  に格下げされてしまったようだ。だからと言って何が変わるわけでもないのだが。

 

 その後も少しの間ギャアギャアと騒いでいたのだが、俺が無言で水を掛け続けると、恨みがましい視線を投げつけながらゆっくりと去っていった。

 

「やれやれだ」

 

 俺はため息をつき、当初の目的であった新聞をポストから取り出すと、家へと戻った。

 

 

 

そして昼過ぎになり、表の砂利が勢いよく何かに踏みしめられるような音が聞こえる。車が入ってきた音だ。

 

「よ、久しぶり」

 

 そろそろだろう、と玄関を出て待っていた俺に、車から降りた友人が声をかけてくる。

 

「あぁ、久しぶりだな」

 

こいつは俺の大学時代からの友人で、ここよりは町に近いところにすんでいる。

 

 俺は友人を家へと招き入れると、コーヒーと簡単なお菓子を用意し、他愛もない話を始めた。

 

ひとしきり話したかったことを話し終わったあと、俺はふと今朝のことを思い出し、友人に話してみることにした。

 

「マジかよ、この辺野生のゆっくりいるんだ!いいなぁ」

 

 話を聞き終わった友人の第一声が意外なものだったので、俺は少々面食らう。

 

「なんだ、お前ゆっくりに興味あったのか?」

 

「ま、まぁな」

 

 先ほどのテンションとは打って変わって、歯切れの悪い友人の返事。

 

 そして友人はおずおずと続けた。

 

「実は俺、ゆ虐が好きなんだよ」

 

 ゆ虐。俺はそこまでゆっくりに関心があるわけではなかったが、全くそれに関して知らないわけでもなかった。

 

「へぇ」

 

「なんだよ、もしかしてドン引きってやつか?」

 

 友人は少し不安げに俺の顔を覗き込む。

 

「いや、別に人の趣味嗜好をどうこう言うつもりはないよ」

 

 俺のあっさりとした、しかし少し冷淡に聞こえたかもしれない返事に友人は少し気を落としたようだった。

 

 当然そんな気はなかったので、友人に気を取り直してもらおうと、俺は彼がなぜゆ虐を好きになったのか、その経緯を聞いてみることにした。

 

「あれは半年くらい前だったかな…」

 

 話によるとどうやら友人は、家を留守にしている間に野良ゆっくりに侵入され、家の中を荒らされる被害に遭い、その野良ゆっくりに仕置きをしている際に目覚めてしまった、ということだった。そして彼によると、それは割とよくあるパターンなのだとか。

 

「そんなことがあったのか・・・大変だったな」

 

 俺は友人に同情のまなざしを向けると、またも意外な答えが返ってくる。

 

「いや、今となってはあの野良ゆっくりたちには感謝してるんだよ。俺にゆ虐という存在を教えてくれてさ」

 

 そう話す友人の目には、どこか怪しげな光が宿っているようにも思えた。

 

 

 

 その後友人とともに、少し離れたスーパーまで買い出しに行き、家で夕飯を楽しんだあと、そろそろ寝ようかという頃になって友人がこう切り出した。

 

「なぁ、お前が昼間言ってたゆっくりにさ、ちょっと意趣返しに行かないか?」

 

 せっかく泊まりに来てくれた友人の話を無碍にするわけにもいかず、まあ話だけでも、と聞いていたのだが、その話が意外にも面白そうに思えてしまい、気が付くと俺は友人の話に乗っていた。

 

 

 

 翌朝、俺たちは準備と簡単な打ち合わせを済ませると裏山へと入っていった。

 

 俺は昨日のゆっくりを探すのは骨が折れそうだな、などと考えていたのだが、あっさりと見つけることができた。

 

 山に入って少し登ったところ、木々がなく開けている場所にゆっくりが数匹集まっていた。

 

 俺たちが近づいていくと、昨日とは違い意識を奪われるモノがなにもないからか、ゆっくりたちはすぐに俺たちに気が付いた。

 

「ゆゆっ!どうしてにんげんさんがいるのぜ?」

 

 集まっているゆっくりのなかでも、ひときわ大きいまりさが真っ先に声をあげる。

 

「ここはまりさたちのゆっくりぷれいすなのぜ!にんげんさんはかってにはいってきちゃこまるのぜ!」

 

 どうやらここにはゆっくりの家族が複数住み着き、群れのようなものができあがっているようだ。

 

 友人はそんなまりさに声をかける。

 

「なぁまりさ、ここはお前の群れなのか?」

 

「ゆっ?そうだよ、ここはまりさのむれだよ!」

 

 友人と大きいまりさがそんなやり取りをしていると、そこに口をはさんでくるれいむがいた。

 

「おさ、こいつだよ!きのうれいむたちがいっていたゆっくりしてないくそにんげんは!!」

 

 そのれいむは、俺の顔をもみあげで指し示しながら群れの長らしいまりさに話しかけていた。

 

「ゆゆっ!?こいつがれいむのいっていたおやさいをひとりじめしているくそにんげんなのぜ?」

 

「ゆぅぅん、まちがいないよぉ!きのうれいむたちにみずをかけたくそにんげんだよ!おさはさっさとせいっさいしてねぇ!」

 

 どうやらこいつが昨日うちの畑を荒らそうとしていたゆっくりたちのなかの一匹らしい。残念ながら俺には全く見分けがつかないのだが。

 

 先ほどまで話をしていたはずの友人のことはすっかり忘れたのか、俺の方を向きなおした長まりさは、俺に向かってドヤ顔をしながらこう言った。

 

「かってにはえてくるおやさいさんをひとりじめするだけじゃなく、れいむたちにみずをかけてゆっくりできなくしたくそにんげんはせいっさいにあたいするのぜ!!」

 

「でもまりさはかんっだいだからいますぐどげざしてあまあまをよこせばはんごろしっ!でゆるしてやるのぜ?」

 

 どうやら完全に俺は悪者にされてしまったようだ。俺は困った顔を友人に向ける。そこにはとてもキラキラした顔をした友人が立っていた。

 

 まるで、クリスマスにサンタさんから楽しみにしていたおもちゃをもらったときの子供のような…。

 

「なにをだまってるのぜぇぇ!さっさとしゃざいしてあまあまをだすのぜ!!」

「しょーだしょーだ!あみゃあみゃよこちぇぇぇ!!」

「んほぉぉぉ!ときゃいはぁぁぁ!」

「あみゃあみゃよこちぇ!!そしちゃりゃくしょにんげんはちゃっちゃとちんでにぇ!」

「うんうんすりゅよ!!ゅーんゅーん!ちゅっきりぃ!!」

 

 先ほどまで黙って成り行きを見守っていた子ゆや赤ゆたちが、長の威勢のよさにつられて、思い思いにはやし立てる。

 

 俺はいい笑顔でフリーズしている友人の肩を軽くたたくと、彼はようやく正気に戻ったようで、打ち合わせ通り作戦を実行し始めた。

 

 俺たちは手近な子ゆや赤ゆを手に持つと、潰さない程度の力で圧力をかけていく。

 

「ちゅっ、ちゅぶりぇりゅぅぅぅ!!」

「ゆびゃぁぁぁ!いちゃいよぉぉぉ!おきゃーしゃー!!」

 

 先ほどまでの勢いはどこへやら、しーしーを漏らし、涙ながらに助けを求める小さなゆっくりたち。

 

「ゆがぁぁぁ!!くそにんげん、むれのおちびたちになにをするんだあぁぁぁ!!」

 

 長まりさが俺たちを睨みつけながら怒りをあらわにする。

 

 そんな長まりさに、友人が話しかける。

 

「まりさ、今から言うことをゆっくり聞いてね。言う通りにしないとこのチビたちは潰しちゃうからね!」

 

「さっさとはなせこのくそにんげんがぁぁぁ!!」

 

 そういうと長まりさは、友人の足へとむかってぽゆん、と体当たりを仕掛けた。

 

ドガッ

 

 おそらく全力の体当たりだったのであろうが、友人の軽い蹴りであっけなく長まりさは跳ね飛ばされる。

 

「おさぁぁぁ!!しっかりしてえぇぇ!」

「はやくれいむのおちびちゃんをたすけてねぇぇ!!」

 

 おそらく、群れで一番強い長まりさが戦っているから自分たちが出る幕ではない、とでも考えているのだろうか、他のゆっくりたちは長まりさに声援をおくったり自分のおちびちゃんに声を掛けたりはすれど、自分からアクションを起こそうというものはいなかった。

 

「ダメじゃないか、ちゃんと話を聞いてくれなきゃ。」

 

 そういうと友人は、手にしていた赤まりさを笑顔で押しつぶした。

 

「ちゅぶっ!ゆぶっ!!!もっぢょ…ゆっぐぢ…」

 

「ゆあぁぁぁぁ!!まりさのおちびがああぁぁぁ!」

 

 少し離れた位置から、潰された赤まりさを見ながら絶望の声を上げる成体まりさ。おそらく彼女の子だったのだろう。

 

「さぁ、長まりさ、僕の話をちゃーんと聞いてね?ゆっくりりかいできる?」

 

 友人が再度、長まりさに向かって話を聞くよう促す。

 

「ゆぐぅぅ、わかったのぜ!さっさというのぜ!」

 

蹴り飛ばされ力の差を味わったからか、あるいは群れの赤ゆっくりが潰されたからかはわからないが、ようやく長まりさは話を聞く気になったようだ。

 

「このちびちゃんたちをはなしてほしかったら、群れのゆっくりをみんなここに集めてね!すぐでいいよ!」

 

 気のせいか、友人の口調がいつもと違っているような気がするのだが…。

 

「わかったのぜ… ちぇん、むれのみんなにつたえるのぜ」

 

 長まりさは、おそらく腹心なのであろう、傍らに待機していたちぇんに群れのみんなを集めるように命じた。

 

「わかるよーいそいでつたえるんだねー!」

 

そういうとちぇんは颯爽と、いや、ぽゆんぽゆんと駆け出して行った。

 

十数分後、広場には5家族分くらいだろうか、ゆっくりが集まってきていた。中には頭に茎をぶら下げているものも見受けられる。

 

「おさー、なんのようなのぜ?」

「しゅうかいなんだねーわかるよー」

 

 長まりさはその問には答えず、友人の方を向いて言った。

 

「むれのみんなをあつめたのぜ!やくそくどおりさっさとおちびちゃんたちをはなすのぜ!!」

 

「はいはいっと」

 

そう言いながら友人は、少しだけ腰をかがめると手に持っていた子れいむをはなし、俺にも同様にするようにアイコンタクトを送ってくる。

 

 友人に倣って俺も手に持っていたゆっくりたちをはなしてやった。

 

「ゆぴっ!いぢゃいいぃぃ!」

「おもにおきゃおがいちゃいよぉぉぉ!!」

「おきゃーしゃー!ぺーりょぺーりょしちぇねぇぇぇ!」

 

 俺たちが少し腰をかがめた位置ではなしてやった、ということは、ゆっくりからすればそこそこの高さから落下したことに他ならない。子ゆっくりたちはそれぞれが痛みを訴え、助けを求めたりしている。

 

 おそらくそれらの親であろうれいむやまりさが、おそるおそるといった形で自分の子ゆっくりのもとへ駆け寄ると、ぐずるわが子をなだめながら足早に俺たちから離れていった。

 

「ゆぅ、ひとあんしんなのぜ…」

 

 ひとまずほっとした表情をしている長まりさに、友人が歩み寄っていき、そしてそのお飾りを奪い取った。

 

「まりさのおぼうしさん!?なにするのぜぇぇぇ!さっさとかえすのぜぇぇ!」

 

「まぁまぁ落ち着いてよ。ちゃんと言う通りにしたらすぐに返してあげるから」

 

 お飾りを奪われ悔しそうにしている長まりさの顔がよほど気に入ったのか、あるいはこれからやろうとしていることに対してなのか、友人の表情はすごいことになっていた。

 

「赤ゆっくりと子ゆっくり、あとは茎の生えているゆっくりを1か所に集めてね」

 

「ゆ?なんでそんなことしなきゃいけないのぜ?」

 

 長まりさは、わからないといった表情で聞き返す。

 

「まりさは帽子が大事じゃないんだ、じゃあ仕方ないなぁ」

 

 と言いながら友人は帽子のてっぺんを千切るようなそぶりを見せる。するととたんに長まりさの表情が一変し、鬼気迫る表情で群れのゆっくりたちに声をかける。

 

「おちびちゃんたちと、くきさんのはえているゆっくりはおさのとなりにあつまるんだぜ!さっさとするんだぜぇぇ!」

 

 流石にお飾りと長まりさの距離が近いからか、奪われるのを目の前で見ていたからかは定かでないが、誰も逆らう様子はなく長まりさの横に子ゆと赤ゆ合わせて11匹、茎の生えたれいむが2匹、不安げな表情で集まってきた。

 

「いうとおりにしたのぜ!さっさとおぼうしさんをかえすのぜぇぇ!」

 

「まぁまぁ、もう少し待っててよ」

 

 そういうと友人は、いよいよもって友達である俺からしても気持ちの悪い表情で、俺に向かってうなずく。

 

 事前に決めた通り。ここからがこの作戦のメイン部分だ。

 

 友人の合図とともに、俺は持参した麻袋に子ゆ赤ゆを手あたり次第詰め込んでいく。それが終わると、あっけにとられているゆっくりたちをよそに、れいむたちから生えていた茎をつかんで、ぶちっと引きちぎり、砂糖水で満たされたペットボトルに刺し、友人に手渡す。

 

「ゆやぁぁあ!せまいのじぇ!いちゃいのじぇぇぇ!!」

「だしちぇにぇ!きゃわいいれいみゅをここからだちちぇにぇぇぇぇ!」

「ゆぶっ!ちゅぶっ!!」(ぶりゅぶりゅっ)

「ゆぁぁぁぁ!くちゃいいぃぃ!!」

 

 麻袋に入れられた子ゆや赤ゆが、騒ぎ始めると、ようやく回りのゆっくりたちも状況を理解し始めたようだ。

 

「「ゆあぁぁぁぁぁ!おちびちゃんたちがあぁぁぁぁ!!」」

 

茎を千切られたれいむたちが、悲痛な叫び声をあげる。

 

「「おちびちゃんをかえせえぇぇぇ!!」」

 

少し離れたところからは、麻袋に詰められた子ゆ赤ゆの親であろうゆっくりたちの叫び声が聞こえてくる。

 

友人は、わなわなと怒りに震えている長まりさの頭に、おかざりを返してあげた。

 

「くそにんげん!!これはどういうつもりなのぜ!!さっさとむれのおちびたちをかえすんだぜぇぇ!!」

 

今日一番の大声を上げる長まりさに、友人はにやにやを我慢できていない緩み切った表情で、こう言った。

 

「何言ってるの?ゆっくりは勝手に生えてくるんだよ?それを独り占めするなんてゲスのすることだよ!理解できる?」

 

「ゆっ?ゆゆっ?」

 

 理解が追い付かず、しばし黙り込む長まりさ。少ししてようやく表情を切り替え、怒鳴り始める。

 

「そっちこそなにいってるのぜ!!おちびたちがかってにはえてくるわけないのぜ!!くそにんげんはそんなこともわからないのぜ!?」

 

友人はそれを聞き流し、反論する。

 

「でも昨日彼の畑に野菜を食べに来たゆっくりたちは、野菜は勝手に生えてくるって主張して、野菜を食べようとしたよね。だから僕たちも、勝手に生えてくるゆっくりをもらっていこうと思うんだけど、何かダメだったかな?」

 

「ゆがあぁぁぁ!なにをいっでるんだぁぁぁ!!おやさいさんはかってにはえてくるもので、おちびたちはむれのみんながすっきりー!してうまれるものでしょぉぉ!!いっしょにするなああぁぁぁ!!」

 

 声を荒らげ、ゆっくり独自の自分勝手な理論を展開する長まりさ。

 

「あの野菜は俺が手間暇かけて大切に育てた野菜なんだぞ」

 

 ずっと黙っていた俺だったが、耐えかねて口を開いた。

 

「うぞだぁぁぁ!おやざいさんはがっでにはえでぐるんだああぁぁ!ぐぞにんげんがひとりじめしてるだけだろおぉぉ!!」

 

「やれやれ、やっぱりゆっくりに人間が野菜を育てていることを理解させるのは無理みたいだね。」

 

 友人は俺に向かって笑いながらそういうと、長まりさの方へ向きなおし、声をかける。

 

「やはり君たちには何を言っても無駄みたいだから説得は諦めることにするよ。野菜が勝手に生えてくるから自分たちのものだというのならそう思っていればいいよ。その代わり僕たちも勝手に生えてくるゆっくりをたまにもらいに来るからそのつもりでいてね!」

 

「うるざいいぃぃぃ!!おやさいさんもおちびちたちもぜんぶゆっくりのものなんだあぁぁ!!くそにんげんはさっさとしねぇぇぇぇ!!」

 

考えることを放棄し、全力でとびかかってくる長まりさに、今度は全力の蹴りをお見舞いすると、友人と俺はその場を後にした。

 

 すすり泣く声や、追いすがってくるもの、長の情けない姿を糾弾する声などいろいろと聞こえてきたが、誰も俺たちには追い付けず、俺たちは振り返らずに家へと戻った。

 

 家へ戻ると友人はトランクから段ボールを取り出し、麻袋の中で騒ぎ疲れてすっかり静かになってしまった子ゆや赤ゆをその中に出していった。

 

 疲れて眠っているものや、あまりの恐怖に気を失っているものばかりで、静かな段ボールをそっと閉じてトランクに積み込むと、友人は満面の笑みで言った。

 

「いやぁ、今日はとっても楽しかったよ。付き合ってくれてありがとう。またゆっくりが出たら呼んでくれるとありがたいな」

 

 正直、俺の中で今回の感想というか気持ちはいまいちつかめていない。自分の中でもうまく整理できていない状況だ。だがそれを友人は楽しかったという。

 

 俺は返答に困ったが、友人が楽しめたのならまぁそれでいいか、と何も言わずに友人に笑顔を返した。

 

「じゃ、また近いうちにな」

 

「あぁ、またいつでもきてくれよ」

 

短い別れの挨拶を交わすと、ペットボトルに刺した茎からぶら下がる実ゆを見て楽しみだなぁ、などと漏らしつつ友人は車に乗り込み、帰っていった。

 

「さて、畑の様子でも見に行くかな」

 

 誰に言うでもなくつぶやくと、俺は畑の方へと足を向けた。

 

 友人がホクホク顔で持って帰ったゆっくりたち。あいつらにはどんな運命が待っているのだろうか。

 

 

 

終わり

 

 

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

少しあっさりしすぎというか、盛り上がりに欠けてしまった感があるかな、とも思いますが主人公の友人がまだ新米おにいさんだったということで納得していただけると幸いです。本当はもう少し加筆していきたい部分もあるのですが、長くなりすぎるかな、と思いこのような形になりました。友人に持って帰られた子ゆたちのその後のほうが楽しそうな気もしますね。